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白い雲  作者: 白木
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出発

 2時40分の帰舎だった。恐ろしく早い・・。行ける・・香月はそう確信していた。それは香月が高地から紫竜号をかり出してまで、行なった訓練の成果・・つまり想定帰還コースをこの鳩が飛び帰った事を意味していた。真っ青に晴れた空には、他には1羽の鳩の姿も無い。紫竜号を彷彿とさせるデビューレースを見る思いがした。香月の天才的な手腕によって、鳩舎の代表主流鳩(のちの香月系最高基礎源鳩となる)が、この日誕生しようとしていた。そして・・2番手は大きく差があり、4時少し前であった。この2羽で、香月は打刻を止めた。この1羽が戻って来た時には、数十羽の鳩が上空に姿を見せたからであった。後続はその後もぽつり、ぽつりと戻って、当日6羽の帰舎を見た香月鳩舎であった。残り4羽の当日帰舎を諦め暗くなったタラップを閉めようとしたその時だった。「バサッ・」と音がした。「あっ!」香月は声を上げた。400キロの後日帰りの鳩であった。すぐ、その真っ黒にやせ細った鳩を抱きかかえると、別棟に作ってある病鳩の隔離鳩舎で、治療をする。難レースの400キロに、後日帰りが一羽も無かった事を心配していた香月であったが、中でも見込みがあると見ていた1羽であっただけに、嬉しかった。この鳩は源鳩パパ号×マロン号の直仔であった。RCのオスで、柔らかい筋肉をしていた・・この鳩も後に大活躍する香月鳩舎の代表鳩となる事は、今の香月にも想像は出来なかったが・・。

 この夜、9時を少し回って、川上氏より電話が入った。

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