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出発
「はい、分かりました」
素直に頷く香月に川上氏もにこりと笑った。この子は、知識が勝っている。そう川上氏は思った。優劣は順位では無い。鳩には、個々の能力の違いがある、その資質を見る事なのだ・・と。しかし、香月は充分に理解して川上氏に訊ねたのであった。人に心があるように、鳩にも個体差があり、それぞれの性格、資質は違う。それが川上氏が常々言う、最後の犯してはならない部分の『聖域』なのだとしたら、きっとそう言う事なのだろうと思った。そこへ踏み込む事に今の香月は躊躇していた。踏み込めばきっと自戒する事になるだろう・・と。香月の追求するものに対する壁がそこにあった。川上氏は香月の予想通りの答えをやはり出して来た・・確かにそれは正論だと思った。
香月の成績はやはり連合会ではダントツの1位~6位を独占している模様で、この夜はそのまま帰路へ着いた。




