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事件
「香月君!香月君!」
香織が、大きく肩で息をする香月の胸に飛び込んで来た。香月はやっとその時我に戻った。
「香織・・」
「私の為に、私の為に・」
泣きじゃくる香織の髪をなでて、香月は言った。
「大丈夫だったかい?怪我無かった?」
しゃくりあげながら香織は頷いた。バンガローの中に入っても、まだ香織は香月の胸に顔を埋めて泣いていた。夏の夜は若者の狂気を誘い、暴走する。無秩序の世界にいきなり飛び込んだ2人にとって、大きな出来事であった。しかし、香月、香織の魂が呼び合う如き叫びは、捨て身の勇気を生み、それを救った。
ようやく落ち着いた2人、香織は香月に腕を巻きつけた。
「香織・・」
2人はこの夜結ばれた。1つの事件が益々2人を畢生の伴侶として結び付けようとしていた。




