競翔仲間
「何してるの?浩ちゃん・・」
香月が聞くと、
「時間潰しさ。複雑な計算方法ってあるんだろうけど、鳩の帰舎時間と、放鳩時間を距離で割ったら、分速計算が出きるだろ?その表を作ってるのさ」
香月も面白そうだと一緒にやり始める。・・その時電話のベルが聞こえてくる。慌てて、香月が電話を取った。6時15分に放鳩されたと言う、川上氏からの電話であった。時計を見ると、既に6時半。鳩はもう一斉に鳩舎に向かって飛んで帰っているのだ。今日は絶好の快晴・・恐らく早い帰舎に違いない。・・まだか・・まだか・・空を仰ぐ。芳川も同じだ。香月の母親が、呆れながらおにぎりを2人に作って持って来る。2人は、それを食べながら空を仰ぐ。
時計を見るとその時7時過ぎだった・・・
「あっ!浩ちゃん!あそこ!ほら!あんなに鳩が見える!」
興奮した香月の声。突如大きな声を発して指差した、帯状の黒い集団の先頭付近から2羽の鳩が急降下してくる。
「帰ってきた!」
香月の心臓は早鐘のように打つ・・。一気に鳩はタラップに飛び込む、ゴム輪を外す、鳩時計に打ち込む。その間にも次の鳩が入ってくる。又打ち込む。芳川は外で、鳩笛を吹いている。もう続け様に吹いて居る。それは5羽がほとんど同時と言える帰舎だった。参加12羽全て帰還したのは、それから30分の間であった。その時何故か香月の胸に熱いものが込みあげていた。その様子に
「一男・・泣いてるのか?・・馬鹿だな・・」
芳川は優しく香月の肩を叩いた。




