競翔仲間
川上氏が高橋会長宅を出る時に、香月に対して一言、二言何かを言っていた。終始川上氏は上機嫌で、香月は初の鳩レースの興奮で、車中の話もほとんど上の空であった。
初レースの興奮で中々寝付かれず、朝方4時過ぎには香月は外へ出ていた。空には満天の星座の輝き。
「今日は上天気だぞ!」
香月は嬉しくなって一人言・・放鳩の時間は6時半。まだ2時間以上もあるのだ。だが・・待ち切れないで鳩舎の周りをうろうろする。・・ようやく夜も白み始めて明るくなって来た。
「おはよう」
芳川だ・・彼も気になったのか、もう起きてきた。
「まだ1時間以上も放鳩時間まであるじゃないか・・幾ら鳩が早く帰って来たとしたって、2時間もそうやって空を仰いでるつもりかい?」
同じく空を仰ぐ芳川に、香月も笑った。初めての競翔・・こんなに興奮するものだろうか・・。香月はもうわくわくとして、じっとしていられなかった。
「ほら・・着替えて来いよ。一男」
そう言う芳川は、もうしっかり着替えて居たのである。
香月を促すと芳川は、
「あっ・・!そうだ!」
自分も慌てて、家に戻って行った。
香月が着替えて外に出ると、芳川は電卓とノートを片手に何か計算している。




