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脅威の力
日没が7時前とは言え、当日帰って来れる鳩の帰舎タイムはこうも違うのだ。つまりこの時間で戻っても、優勝圏内には到底入れない。いかにトップレーサーの飛翔速度が高レベルであるか。香月は分析していた。
しかも、参加地区には最短660キロの鳩舎もある。最長で、900キロ近い位置にある鳩舎が圧倒的に不利な事は言うまでも無い。
香月は、3時前から鳩舎の前で、待っていた。不安で仕方が無かった。読み通り展開するなんて事など考えてもいなかった。見えないレースが見える競翔家などありはしない。一歩でも鳩とシンクロナイズする為に競翔家は推理するのだ。今回の香月はもう一つ読みがある。山沿いを通る鳩は、帰還地近くに発生する乱気流の発生に影響されると言う考えだ。つまり、本年度のGPを制するのは、海沿いを通ったごく一部の鳩達であるーと。




