脅威の力
北村は今や、連合会の中堅クラス、若手の面倒見も良く「兄貴」と慕われている。そして、そのまま閉函時間となって、すぐ香織の所に向かった。昨夜の事もあり、近くの喫茶店で談笑する2人であった。
「ねえ、香月君、大学へ通うのはどうするの?」
「自動車の免許を取ろうって思ってる、今まで、そんな余裕も無かったからね」
「私の場合、冬休みになんとか教習所に通って受かったので、学校へは自動車で行くわ」
「橋本さんと一緒だから、心強いよね」
「うん、香月君の大学の方はどうなってるの?」
「ああ、通常の大学と違ってさ、国家公務員のような施設だから、週に3回、講義の他は、自分が所属するチームでの研究自体が、そのまま一学科のようになっている。時間的余裕はあるんだ」
「でも、その分厳しいんでしょ?」
「ああ、卒業までに論文を完成させないと、5年、6年、最長7年間は大学だ。」
「その論文が完成出来ないと?」
「卒業出来ない・・と言うか、ただ卒業しても普通の大学での修士課程と同じ。国家の仕事には従事出来なくなる」
「貴方は?」
「俺は、獣医になりたいんだ。でも、そうなるには、何年か、国が指定する機関で働く事になるか、教授としてS工大に籍を置く事になる。その為に、学費の免除や、研究費が出る訳だからね」
「本当に特殊な大学なのね」
「ああ」
「大学に残るって方法もあるんでしょ?」
「それも、ある。教授の道だね。でも、俺は研究より、より多くの動物と触れ合いたいんだ」




