表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白い雲  作者: 白木
211/545

春の息吹

村上「じゃ・・恥ずかしいんだけど、言います。私が剣道を始めたのは、香月さんが好きだったからです。この気持ちはずっと変わりませんでした。私は良く男の子に間違えられるほど、おてんばで、勝気な印象がありますが、自分ではそんな事はないって思ってます。香月さんが、高校でも剣道部に入部するって聞いた時も、迷わず入部したんです。私はこの中では香月君と唯一同じ中学校出身ですから、もう、中学校からの片思いでした。川上さん、御免なさい。でも、香月君は中学校時代、本当に物静かで、一人図書室で本を読んでるような人だったの。優等生には違いないけど、大人びてるような近寄り難い雰囲気を持っていたわ。でも、私が本当に香月君を意識し出したのは、やっぱり最後に彼が出場した県大会の試合でした。それまで、かなりの実力があるのに、一度も試合に出た事が無く、私はその試合のマネージャーを買って出て。はっきり言って、皆は余り期待してなかった見たい。でも、私はその彼の実力を信じてた。そして、あれよあれよと言う間に県大会の決勝戦まで行っちゃって。それもそこまで全て、一本も相手に取らせない、分殺と言うのかしら、とにかく凄かったわ。皆は知らなかったのよ、彼の本当の実力を。で、決勝戦は木村さんだった。もの凄い試合だったわ、まさに紙一重の差。最後に香月君が足を滑らせてバランスを崩した時、木村さんの捨て身の横面が決まって・・。その感銘と同時に、私には無性に残念って気がして、ぽろぽろ泣いちゃった。香月君がどんなに悔しかったかって思ったの。そして、試合が終って防具を取った香月君の足は、真っ赤に腫れあがっていたわ。そんな足で、木村さんと互角以上に戦かったんだわ。なのに、悔しい筈の彼が白い歯を見せて笑ったの。木村さんに握手をするその爽やかな姿に・・私は、その時から香月君だけを見てた。見続けたいと思った。ううん・・好きだって言えなくたって良い。あの爽やかな笑顔を見ていたかったの。高校も頑張って同じこのE高校を受験し、同じ剣道部に入った。私が頑張れば、頑張る程香月君との距離が近くなるって思った。でも、川上さんの出現を知った時、私は凄く悲しかったわ。私なんてどうあがいたって、叶わない、素敵で、可愛い人だから。でも、それでも私は忘れられなかった、あの笑顔を。ずっと見ていたかったの。あの最後の試合、木村さんは中学校県大会時の、香月君の足の事を知ってて、それで、組んでくれた試合よね。でも、やっぱりあの後、寄り添う2人を見て、私ははっきりと失恋を味わったのよ。悔しさなんてちっとも無かったし、心から2人に心から拍手を贈りたいって気分になった。香月君を変えたのは、やはり川上さんだから。だから、これ程変貌した彼の事をちっとも知らない幸田さんは、美談だって言ったけど、私にはそれが面白半分の興味にしか思えなかった。私の大事な思い出を壊して欲しく無かったのよ」


 香月が何か言おうとする前に、幸田が言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ