春の息吹
「クスッ・・」
「あはは。初めて会った時を思い出したね。こう言う答えを待って居たんだろう?」
あの頃と違うのは、香月が香織の黒い大きな瞳を見ても、赤面しない事と、互いの考えている事が手に取るように分かる事だ。
「そう。でも、貴方はあの頃と比べると逞しく成長して、今じゃ私の一番大切な人になった」
「俺もそうだよ。君は一段と輝いて、かけがえの無い存在になった」
「貴方と一緒に受験勉強を始めるようになって、同じ高校に通い、ほとんど毎日昼休みには、こうして机を挟んで昼食を食べるようになって、最初は皆からもからかわれたりしたけど、その内誰も言わなくなった。上級生の人も、そして貴方のファン倶楽部の人も」
「ファン倶楽部?大袈裟だけどさ、君の方も大変だったよ。帰りに待ち伏せされて、君との事を色々聞かれたり」
「あら?そんな事があったの?でも、貴方はそれで?」
「勿論、俺の彼女ですって答えたさ。先生の方からも色々あったけど、結果的には堂々と俺達は付き合って来た。次元の低い話は消えてしまったんだよね」
「本当に色々あったわね。でも、一つ、一つが私にとっては大事な思い出だし、これからも凄く大事な事だと思うの。だから、これから貴方と私は違う場所で、違う人との中で、過ごす訳だけど、ここで約束して。私は貴方の良き理解者として、趣味は続けて欲しい。でも、私との時間は今度は貴方が作って欲しいの」




