大激論
磯川「確かにそうだ。血統書を見ても、パイロン号が3つも4つ出てくる鳩も多い。しかし、それは、厳しい競翔淘汰によって、残った血筋。それも、優勝鳩しか仔を取らない徹底した作出法だよ」
香月「つまり・・問題なのは」
磯川「問題?」
香月「そのパイロン号直系群が、近親で、それも数年で作られた系統の一群だと言う事です」
磯川「弊害も多いが、血が濃く出た鳩は頭抜けたものが多い。異種交配しても殆どタイプが崩れない」
香月「論点が逸れました。近親交配に話を戻しますと、その為に鳩自身非常に神経質な個体が多いと言う事です」
磯川「逆に、言い直すと、頭の良い鳩も多いと言う事だ」
あくまで、磯川は自鳩を持ち上げていた。
香月「それは贔屓目では無いですか?」
磯川「事実を正確に言ってるだけだ」
叉、磯川の顔が上気した。会長が2人の顔を交互に見る。あくまでも冷静な香月だった。
香月「その事が原因の一つですよ、磯川さん。つまり鳩を客観的に冷静に見ようとしていない」
磯川「君は、この俺の鳩を見る眼が正しくないと言うんだな?競翔歴は君より3年もあり、自分でもレベルの高い競翔家と自負している、無礼じゃないか、余りにそれは!」
磯川が怒った。会長が腰を浮かそうとした。しかし、香月は言葉を続けた。
香月「近親の弊害の一つに神経質と言う事があり、それは血管が細い為に、異常に興奮すると、自分を見失う事です。レースの度に興奮して、イライラがますます激しくなる・」




