大激論
香月「素晴らしい血統ですが、どんな血統にも必ず弱点はあります。どこにあると思われますか?」
磯川「その言葉は心外だね、創始者ペパーマン氏の徹底した「優勝鳩しか仔を取らない」理論で、無敵の128連勝は知っての通りだ。ここ2シーズンの俺の活躍を見て貰っても証明済み。どこにも弱点は見当たらないよ」
香月「そう思われますか?」
磯川「全天候型で、スピードがあって、勇敢だ。欠点を探すのが難しい位だ。」
少し憮然とした表情で、磯川は言った。
香月「心外かも知れませんが、聞いてください。ペパ-マン系は、チャンピオン鳩達の集合です。その固定までには、兄弟や、親子交配を数多く行っております。しかし、その程度の数代の歴史に於いては、鳩質が揃った一群にはなりません。様々なタイプの鳩が生まれて来ております。過去にペパーマン系を導入した鳩舎はその一群のタイプで、使翔し、そこから派生して多くのチャンピオン鳩を叉輩出しています」
磯川「む・・しかし、それは競翔鳩の歴史が浅いせいで、どんな血統にも言える事だ。多かれ少なかれ、タイプの違う鳩は当然生まれて来る。特に近親交配には、全く異種のタイプも出現して来る」
香月「その通りです。中でも、磯川さんの所のパイロン号直系は、当代1の飛び筋だと言えます。これは突出していると思います」
磯川は少し機嫌が良くなった。
磯川「それで・・?」
香月「鳩質が小粒で、揃うと言うのは、パイロン号を頂点として、その代に到るまで近親交配が繰り返し行われて、言い換えれば、パイロン系と言っても、差し支えないでしょう」




