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白い雲  作者: 白木
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誕生

 天候が悪いので、8時になっての放鳩だった。農林大臣杯、このレースは、全国杯のレースの1つだが、山沿いのコースになるので、過去全国杯の授賞はこの地区では一度も無かった。分速も極端に落ちるこのレースは、若鳩の登竜門と言われ、東神原連合会独自の放鳩地であった。過去に白川氏から提案された放鳩地で、難コースであった。この放鳩地を毛嫌いする会員は居る。代表的な会員の中では、渡辺鳩舎、浦部鳩舎がある。彼等は今回参加していない。しかし、この東神原連合会独自の400キロレースを実施し出してから、経験鳩はその後のレースに於いて、高い帰還率を誇るようになった。忌避する者、敢えてここを選ぶ者。今は後者が圧倒的になっていた。

 帰還コースは山際をジグザグに通るので、実際飛距離は、600キロ近くになる、磯川が見逃しているのは、この点だ。その為、香月は磯川に先程の質問をぶつけたのだったが、これが好天の時なら、さほど問題は無い。海沿いのコースを辿るからだ。しかし、この悪天を制する鳩こそが、その競翔鳩としての素質を証明する事となる。川上氏、香月は勿論その理由を知っているし、ベテラン会員達にも、この説の信奉者は多い。香月はこの難関を制する為に、飼料にも工夫を凝らし、レース前に高価なサフラワや木の実を60パーセント近く混入し、レース後にも体力が残るようにしておいて、二重、三重の試みを施していた。残念ながら、磯川はその点を見落としているように思えた。が、それでも、優秀なペパーマン系の事だ、結果は出て見ないと分からない事ではあるが・・・。

 そして・・香月鳩舎の一番目の帰舎は、2時少し前となった。すぐ呼び込んでタイムしたが、相当ぐったりと疲れている様子。実際距離を600キロだとすると、この曇天の中、分速1600メートル近くで飛び帰った事になる。香月の計算通りなら、この鳩は分速1200メートルを出していて、優勝圏内に入っている筈だ。しかし、予想外に帰舎は良くて、32羽参加中、2時半までには16羽が帰っていた。タイムしたのは5羽。いずれも、ピン太×リリー、グランプリ×マロンの仔鳩達であった。

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