誕生
「やあ、どうだい?今日は相当な分速が出てるようだね。分速1800メートル台の記録が、続出しているようだ。君も100キロは強いからね。早かったんだろう?」
「・・・・それが・・」
「・・どうした?悪かったのかい?」
「いえ、そうでは無くて・・逆なんですが・・」
「なんだい・・それにしては声が沈んでるじゃないか。君の所が早いのなら、喜ぶべきだろ?」
「はあ・・ひたすらまずい結果です」
「お・・おいおい・何がまずいの?どうしたの?」
川上氏が呆れたように訊ねた。人をからかうような子じゃ無い筈だが・・。
「ええ・・最初の打刻が7時6分なんです。それから10分までに3羽追加して、その2分前後に2羽。計6羽タイムしました。その6羽全部栗系です」
電話の向こうで、一瞬川上氏の声が詰まった。
「・・え?なんだって?それは、途方も無く君が早いよ。全部栗系・・するとあのシューマン系だね・・ほお・・」
「それが・・心配してるのは、その栗系の中でも・・例の子鳩が・・一番早いんです」
「何・・?」
再び川上氏の声が詰まった。
「予想外です・・」
「血とは言え・・老鳩同士の子鳩がそんな英傑であったとは・・・・あ・・」
川上氏が、言いかけて、言葉を繋いだ。
「全国杯に乗る事になるやも知れない・・そして、血統の公開だね?君が今、心配している事は」
「はい・・その事です」
「迷う事は無い、種鳩にしたら良い。全国優勝したら当然じゃないか」




