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白い雲  作者: 白木
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誕生

 700キロ西コースは、高橋会長が連合会優勝、6500羽中総合24位、川上氏も連合会2、4、6、7位に入賞した。磯川も3位には入賞したものの、連戦参加のペパーマン系も、かなりハードな西コースは、疲れが出ているようだった。この時点で、磯川は秋のレースを中止した。川上鳩舎の第一回最優秀鳩舎賞はやっとこれで確定的となった。

 そして、最終1000キロDCレースは、川上鳩舎が、難レース連合会唯5羽翌日帰りの中、これも愛鳩「シュウ号」が優勝、総合59位に入賞したのであった。

そして・・例の仔鳩が誕生したシーンから、2週間後の事であった。川上氏が、香月の家に訪問する事になった。子鳩を見たいと言う主旨でもあるが、香月の両親とも話があるそうで、家では慌しく、母親奈津子が部屋の掃除をしていた。外ではすっかり香月家の家族となった、ドンが楽しそうに走り回っている。ドンは非常に訓練された賢い犬だ。


「おーい!ドン」


 香月が呼ぶと一目散に掛け戻ってくる。頭を撫でながら、香月が言う。


「今日はね、君の好きな香織ちゃんが来るよ。良かったな」

「ワン!」


 言葉を理解しているのやらどうか分からないが、嬉しそうにドンは尾を振る。広がった田園風景の中で、動物も人間もおおらかになるのだろうか・・。

 川上氏は何回目かの香月宅訪問であったが、この日は先に家に入った。香月と香織が外でドンと戯れていた。用件は、仔鳩の事もあるが、最近特に学校の先生の訪問が多くなった、香月の進路の件であろう。川上氏来訪は、母親奈津子からの電話でその相談の事も兼ねていた。

 父、泰樹が型どおりの挨拶の後、こう切り出した。


泰樹:「いやあ・・本当に良いお付き合いをさせて貰っています。私達も、いつも感謝しています。今日お越しいただき少しお話もしたいと思うのですが・・・他でも無いのですが、こいつが、一男の進路について非常に心配してましてね。こんな相談を貴方にはご迷惑とは存じましたが」

川上:「いえいえ、とんでも無いです。こちらこそ、本当に良い息子さんで、家内ともども感謝してるんです」

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