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白い雲  作者: 白木
144/545

誕生

「見抜かれたね。その通り。秋に参加させるつもりで、1000キロ以上の記録鳩以外、後日帰りも含めて、全鳩主翼の2枚を抜いた」


 会長がその答えを首を傾げながら・・言った。


「でも・・何故、そこまでして?若鳩だけでも、君なら充分通用するだろうに・・」


 川上氏はそれを否定した。


「レースに負けたくないからですよ。こう言う若手も急速に伸びて来ているし、最優秀鳩舎賞設置発案者の私が旗を振って先導しなければ。私はその為にも今年、このタイトルは全力で狙いたい」


 居合わせた全員の顔が引き締まった。追われる立場・・連合会を支える立場で、川上氏は、自分の信念を曲げても、競翔に全力を示すと言うのだ・・。口にこそ、出さなかったが、磯川のパイロン号直系は、台風の目になる事は、香月、川上、全員が知って居た。

 当日は薄曇、向かい風の悪コンディションの中、やや遅れた7時に放鳩となった。こう言う向かい風のレースは思いもかけない結果が出る事もある。帰舎予想時間に鳩舎の前で待つ香月だったが、15分前に驚くべき速さで、数羽の鳩が飛んで行ったのは・・一体なんだったのだろう。時計は8時16分を現在差していた。分速の望めるレースでは無い。空には乳白色の雲に時折、強風が舞う・・最悪のコンディションだ。待っている香月の鳩舎の帰舎は8時30分であった。


「遅い・・遅すぎる・・」


 一人言をつぶやく香月だった。タイムはしなかった。8時20分には、香月鳩舎の真上を一群が通り過ぎて行った。予想していた事とは言え、又、充分に訓練が出来たとは言えない今秋の香月鳩舎であった。いっそ、春に回そうか・・彼は思った。全鳩が戻った時点で、香月は今秋を早々と諦めた。打刻はしなかったものの、川上氏と、同行して開函に付き合う事になって、車内で、打ち明けた。川上氏も考えを肯定した・・。

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