回顧・・希望
余りに性急な香月の行動に、香織は驚きながらついて行った。
ところが・・剣道部の顧問、杉村先生と、3年生の辻村主将と木村からは、強く留意を求められた。
辻村はきつい調子で言った。
「とにかくね!香月君、勝手過ぎるよ、君!。剣道部に在籍する以上、規律や伝統があって、いかに君個人の理由があっても、変則的な倶楽部参加にしてもだね。都合の良い方向に勝手に自分で決められたんじゃ、俺も主将としてたまったもんじゃないよ!」
「申し訳ないです。けど、僕は将来の夢の為に今から準備しなくてはならないんです。辞めさせて下さい」
「それを言うのなら、君は一年の時に結論を出すべきだった。確かに君の変則的な倶楽部参加は、文句を言う者も居る。けど、去年のインター杯での成績で、木村と並ぶ実力の君には試合には出さないと言う事だったが、是非、今年、来年と秋のインターハイには出場して貰いたかった。その俺の気持ちも分かってくれよ」
辻村は、香月の実力を買っていた。周りの雑言も押さえてきた。それは、香月も良く知っていた。木村が言った。
「この秋だけでも、参加してくれよ、香月君」
「有難う!木村。でも、僕が出場する事はきっと、来年主将を受ける君にとって、倶楽部運営に揉め事を起こす事になる。それならば、今退部したい」
香月の決心は揺らぎないようで、でも、だからと言ってすんなり退部を認める雰囲気では無かった。その時、一緒の香織が言った。
「お願いです。香月君の退部を認めて下さい。私は自主的に勝手にマネージャーをしたりしてるから、正式な倶楽部員では無いですけど、香月君はよくよく考えた上での結論なんです。今も先生の所で、進路について話してきました。彼の目標はS工大獣医学部・・学校で習う知識より、もっともっと幅広い知識を吸収しなければ受からない大学です。どうか、お願いします」
やっと、その時顧問の杉村先生が口を開いた。
「ほう・・S工大・・・我が校から過去にもストレートに入学した者は居ないと聞いている。K大卒業者でも不合格になるほどの学校だ・・それは、大変だね。どうだ?辻村君・・こう言う事なら引き止める訳には行かないだろう」
「そ・・それは・・」
辻村が口ごもった・・。




