希望
「おう!なんだ?わしに出来る事かな?」
「ええ・・他でもないんですが、今両鳩の仕切りは完全に取り外しましたので、そこで、GNが終るまで、飲料水に牛乳を少量入れていただきたいのです」
「ほ?牛乳とな?わはは。面白い、良かろう!」
「君の考えは突飛過ぎて、私には理解できないよ。ははは」
「異論など、無かろう?ここまで完璧に読んできた香月君の管理を」
「はい・・ありません。では・・このへんで・・」
頭を深々と下げながら、川上氏は目線を白川氏に送った。それは、白川氏も充分に理解していた。川上氏は全てを許容すると約束したのだ。白川系を使翔すると・・。香月を見守ると・・。残り少ない余命の白川氏に出来るだけの事を自分はやるのだとと・・そう決心したのだった。
この夜は、一緒に川上氏宅で食事をしようと言う事で、香織との時間を持ってやった川上氏らしい配慮があった。あんなに我儘で勝気な娘が香月に出会って、県下でも有数の進学校に入学し、元々明るかった娘ではあるが、人に対する思いやりも持つようになり、実に香月に対しては控えめで、従順な所が見える。この変貌ぶりは、香月の大らかで、純粋な温かみのある性格からであろう。素直に娘の成長と2人の交際を双方の両親は喜んでいた。
楽しそうに食事をしながら、しきりに香織が香月に話かける。
「ねえ、香月君、夏休みになったら私、海に行きたいな」
「良いけど、まだまだ先の話だね」
「だって、去年も生徒会の夏季活動があったり、剣道の合宿もあったでしょ?それに、最近学校でもお昼ご飯一緒に出来ない事も多いんだもん」




