白川老人
「ネバーの記録、700キロレース以後の分速を調べましたら、常に1100メートル台の安定した分速です。それはどんな悪天でもほとんど変わりません。それに対して、白竜号は、700キロレースの分速が1200メートルから1300メートル台が2度、1000メートル台が1度(この時は悪天)、又1000キロレースでは分速1000メートル台でしたが、1200キロレースでは2年連続で、1100メートル台の分速(2年連続総合優勝)。現在の高速レースにおいても1100メートル台のGNレースは快分速です。でも・・その時ネバーがそのレースに参加されていたら、どうだったのでしょう?」
「・・実に興味のある話ではあるが・・時間が来てしまった。道中で続きを聞く事にしようか」
川上氏は、胸中が締め付けられる思いがした。この・・少年は全てを見切っているのではないか・・と。
途中寄った北村の家で、鳩時計だけ預かり、風巻連合会の桜田会長宅へ向かう2人だった。
「一つ、私から質問するよ」
川上氏が少し難しい表情をして言った。
「はい・・」
「先ほどからの君の意見だと・・ネバーの方が白竜号より優れていると言う事になる」
「いえ!とんでも無いです。両鳩とも銘血の結晶。稀代の競翔鳩です」
「なら・・両雄並び立たずと言う事がある。そう言う事ではないのか?」
「いえ・・前にも言いましたが、ネバーは完璧な競翔鳩です。きっと白川のじいちゃんはネバーに期待していたと思うんです」




