#31それから・・・エピローグ
▼エピローグ
「海斗!海斗!」
誰かが耳元で叫んでいる。以前にもあったような場面だ。
目を開けると、白い天井が見えてきた。
―なんだよ、五月蠅い!―
全身で寝返りをうとうとしたその時、ままならぬ痛みが走った。
「よかった、目を醒ました!」
感嘆の声だと気がついた。
―なんだ?―
「海斗、安静にしてなさいよ!まだ動ける体じゃないんだから!」
それが聴き慣れた声だと分かった。
「ふ…風香……?」
「風香?じゃないわよ。もう、どれだけ心配したことか……一週間近く眠り続けてたんだからぁ」
「ここは?」
「病院よ!海斗いきなり車の前に飛び出して衝突したんだもん。驚くわよ!このくらいで済んだだけ、幸運だったわよっ!」
見える範囲で目をこらしてみる。
足先に包帯が巻き付けられて吊るされているのが目に入った。
「あばらも折れてるのよ。寝返りも打てないでしょう」
「ああ、痛いよ」
「先輩が救急車を呼んでくれて、素早く処置してくれたのよ。今度会ったらお礼を言いなさいよね!」
「げっ。オレあいつ……苦手」
「苦手でも何でも、お礼はしてよね!」
『シャツ』とカーテンを引く音がする。
「見て御覧なさい。今日はなんて清清しい朝なんでしょう」
眩しい光が目に入り込んできて痛い。まだ覚めやらぬ何かがオレの中で渦巻く。
「風香、お前毎日来てくれてたのか?」
傍にある花瓶に生けられた花を見ながら、テレながら訊く。
「うん」
「そうか……そう言えば変な夢を見たよ」
「どんなの?」
「えっとな……」
それは、時間の狭間。夢ではない本当の出来事。
「海斗』は『カイト』で、同じ時間軸の異次元の世界に入り込んでいたのである。
そんな事とは露知らず、恋人の風香にその話を語りはじめる。
カイトが入り込めないでいた肉体は、実際の海斗の中で眠りに就いていた。そして、夢を見る形でその出来事を記憶していた。
それから先は……異次元のその後の世界のことは、再び海斗の夢の中にでて来る事になる。
『エストラーザ』『サリバーン』『キリアートン』の三国は一週間後、約束通り平和条約を結ぶ。
その一年後、カイトと、『サリバーン』のウェンディは結婚。それから一年後、ウェンディは男の子を出産。名は、カイル。後に一国の王となる第一皇子が誕生。
『キリアートン』は、半年の内に国を再興し、二年後、グェイン国王と、ジャスティの間に女の子をもうける。
その一年後、第一皇子を出産。不思議な縁で、年頃になり第一王女と、『エストラーザ』の第一皇子がめでたく結婚。
そして、平和条約によって『エストラーザ』の貿易港が使用可能となり、多くの国を行き来出来るようになる。
実際、王グェインは、その多くの国を視察して、念願の国土拡張をはかる。
『サリバーン』のフェンディ皇子は、配下のメイトを正妃として結婚。
子宝に恵まれメイトは五人の子供を産み落とす。
男の子三人と女の子二人。同じく平和条約にて、『エストラーザ』の一部の土地を借り受け、作物を大いに収穫していた。
この平和は、一世紀続くが、再び戦乱の世を招く時が来る。それは、まだ知られていない未来の出来事であるので、また今度の機会にでも。
これで、カイトが主人公としてのお話は完結です。
確か、五、六年前に書いた作品なのですが、今見ると、会話文が多くて、世界観が描けてなかったなと反省するのですが、今回はそのまま。少しだけ気になってた所だけを加筆して、お届けしました。
でも、個人的に、フェンディとメイト。グェインと、カイル(ジャスティ)のお話など改めて違う方向で書けたら本望かなと。
特にフェンディとメイト。この二人の過去と未来など加筆したい気分です。
また、読みたいなって方いらっしゃいましたら、こっそり教えていただければ幸いです。
それでは次も、ファンタジーでお送りします。