#21キリアートン会議
▼『キリアートン』会議
会議にはグェイン国王及び、宰相メイディン、そして大将クラスの騎士達が集まっていた。
「…ですが、この人数を持ってこの場を保たせるのはいささか困難なのではありませぬか?」
響き渡る大将の声。
「いや、この人数で良い。敵もこれ以上は攻めては来れまい。ただ足留めをすることと、敵への打撃を考えての配慮だ」
グェインは、その、大将アランにその心の内を明かす。
「確かに、開けた台地としてのこの場所は、我々にとっても、敵にとっても一斉攻撃を仕掛けるのに都合が良い場所でございます。そして、地の利としても高台を持つ我らが有利にことが運びます。一時敵の足を止めるにはこの地が最良かと…」
弓隊を率いるモラン隊将は答える。
「多分敵は、東と西に面した地より攻撃を仕掛けてくるでしょう」
メイディン宰相は地図を広げているその場所を指し示す。
「正面より侵入するのは、決して容易ではない事は、『エストラーザ』のカイト皇子が承知しているはず。無闇に行動を起こす事は決して有るまい」
グェインは正面の門の強固なる場所を指し示す。
「『サリバーン』の者は、一度我らの城の周りを調査した形跡が有る。もしかするとその盲点を突いてくるかも知れない。心しておくように各部隊に伝令をまわせ!」
その言葉に各将校はざわめく。
「特に西側の陣は見張りを厳重にしておけ」
これは、隠し通路のことをグェイン自らの意図も含まれてはいるのであるが、誰もその事には触れないようにしていた。
「承知致しました」
そう言うと、一致団結を決意する返事が返って来る。
「一段落する頃、またこの城を出て、『エストラーザ』の街に、火を放て!敵はこの城にばかり気を取られているはずだ」
そう言うと、グェインは座に腰を下ろす。
それを合図に、
「では、我々は各部隊に連絡致します。これにて失礼致します」
会議は一段落を終える。各隊将は、この場を後にした。
「グェイン王、手始めにと言う事では有りますが、この作戦は後に尾を引く事はございませんか?」
少し心配気なメイディン宰相は言葉を濁しながらグェインに忠告する。
「大事ない。籠城を決めこんでの戦だ。ただ、今は物資の事のみが我の安堵出来る物であれば、そう安々と、打ち崩れる事はないと確信しているからこそだ」
グェインの言葉を聴き、メイディン宰相も素直に従う決意を新たにする。
「承知致しました。そうやすやすと、敵の思う壷になる事はないでしょう。今は、王の意志を尊重する事が、我らの志気を高める事となりましょうから」
弟のグェインを頭としてやって行く事より兄の方をとったメイディン宰相の策略は好する事でなければ成らない。今だからこそ、皆は信じているのである。
「それでは、私もこの場を失礼致します」
短い会議ではあった。が、静かにそれは幕を下ろす。
独り残ったグェインは、確かな勝利への道を、感じ取っていたのである。