#1プロローグ
▼プロローグ
この日は今でも忘れられない、そんな日になった。
彼女への想いは本当に純粋なもので、彼女が笑えばオレも嬉しい気持ちになり、悩みを相談されれば自分のことのように悩んだ。
オレはそんな彼女を信じ愛していた。
しかしそれは、この物語の序章に過ぎない。
外は雨。
傘をかざす人の群れの中、オレは駆け足で彼女との待ち合わせの場所へと急いだ。
いつもの喫茶店。
そこは誰にも邪魔される事のないオレたちだけの一時ながらの憩いの場所。
ここでは、そこら辺で流されている有線の曲はいっさい流されてない。この店の売りなのであろうか、それともマスターのこだわりなのか……ソフトなインストロメンタルのみが流れる、心の落ち着く場所。この店に来るお客の大半がその雰囲気を気に入っているようである。
オレはいつもの窓際の席に座りいつものコーヒーを注文する。
時計の針は、約束のその時間の十分前を指していた。
運ばれて来た、コーヒーカップの取っ手に指を掛けひとくちロをつける。
砂糖やミルクを入れるのは好みではない。
常連となりつつあるオレたちの事を知っているバイト生は、ミルクだけを運んで来る。ミルクは彼女のためのもの。何時も彼女はミルクティーを頼むからだ。
ふと窓際に目を向けた。
ガラスに弾かれた雨の雫が滴り落ちてゆくのが眼に入る。
そのために、その奥の状況に気付くのに時間が掛った。
するとそこに彼女の姿を見た。
傘をさし、何やら隣の人物と親し気に話しをしている。
そいつが、彼女の学校の部活の先輩と名乗るもので、このオレの、唯一の悩みの種でもあった。彼の者が、彼女を好きなのは一目瞭然で、オレの存在さえ知っていながら、何時までも彼女の気を引く事ばかりしている。
よりにもよって今、こいつの婆を見なくちゃいけないのかと一度持ち上げたカップをソーサーへと置き直す。
信号機が青へと変わった。足止めされているのだろうか、彼女は一向に横断して来る気配がない。
オレの中で、『ざわざわ』と何かが沸き起こった。
次の瞬閥、荷物もそのままに駆け出す。
店の中で何か叫んでいるのだが、そんなもの気にも止めなかった。
背後で店のベルが
『カラーンカラーン一』
と鳴ったのが聞こえた。ドアを開け放ち一直線に彼女のもとへと走った。
降リ続ける雨。
オレの眼には彼女と、その隣の男の姿しか入らなかった。
―信号は赤―
その時オレの体は鈍い痛みを残し、宙を舞っていた。
その姿は、彼女の眼に入ったのであろうか。
決して見て欲しくはない。そんな事を朦朧とした意職の中で願った。
オレの意織はそのままフェードアウト。そして真っ暗な世界へと飛び立った。
そこまでが、今までのオレが覚えている全てだった。
今迄、恋愛物ばかりを書いておりましたが、今回はファンタジーでお送りします。少し恋愛も含まれたりしますが。。。
気になってたところを少し手直しをしながら、UPしていこうと思っております。
最後までお付き合い頂けると嬉しい限りです。