に
誰かが、廊下を歩く音がする、玄関の前に来る、
私の心の準備もままならないまま、無情にも扉が開いた。
「........................うそ。」
これは私の声ではない。彼は目に見えて割る程驚きをあらわにし、
そして次の瞬間私におびえた。
「どうして、」
「大丈夫、知っているから。」
「何を、」
彼が続けようとしていた言葉を、後ろからやってきた声がかぶせてくる。
「いっちゃーん、どうした「出て行け。」
可愛らしい女性特有の、私では到底出来ない猫なで声がすべてを言い終わる前に、彼は、私が聞いた事もない低く、静かに、ある種あからさまな物よりずっと怖い怒りをあらわにし、彼女を追い出す。
それから目の前の女性は私に気付き睨みを利かせ、が、彼女が言葉を塞ぐより速く、彼は彼女の手を引いて、
全く時間もたたないうちに彼女を追い出した。
追い出され際に彼女が私をまた睨みつける。それと同時にその子の目には涙が見えて、私は少しいたたまれない気持ちになった。
それにしても本当に、彼の行動は目を見張る程速かった。全ての事がはっきりすするよりも早く、きっと5分もたたないうちに、彼は一緒にいた女性をあわてて追い出し、
服を着て、私を部屋に招き入れ、座らせる、という一連の行為を終わらせた。
彼の部屋は寝室とリビングのある2LDKという大学生にしては少し贅沢な部屋割りだ。
がしかし、その間私と彼は終止無言である。
気まずいのであろう、彼はキッチンへ行き、あまりした事はないであろうコーヒーを入れている。
私も、ことの成り行きをただ呆然となされるがままになっていたので
この沈黙がありがたい。
とりあえず何も出来ないのでどうやって話をもっていくかを考える。