第2話
外は太陽が真上まで昇っており、強い日差しが降り注いでいる。
道の両側では果物や野菜などを売っており、人通りも多く賑やかだ。
しかし、騒々しいのが嫌いなアレンには不快でしかなかった。
羽織っているローブのフードを被り、街の北に向かう。
「あんた、旅の人かい?」
アレンは声をかけられ、立ち止まった。
パーマ気味の髪に、小太りの中年女性が笑顔で黄色い果物を差し出した。
化粧が濃く、首から上が真っ白になっている。
「今日仕入れたばかりだから新鮮だよ、安くするからどうだい?」
アレンは女性の顔と果物に目をやると、そのまま歩き始めた。
「ちょ、ちょっと買わないのかい?ったく、これだから素人は困るね~」
女性は椅子から立ち上がり、腰に手を当ててため息をついた。
アレンは足を止め、振り返った。
「おや、聞こえちゃったかい?」
わざとらしく口に手を当てて、笑っている。
人を小馬鹿にしたような、不快な笑い方だ。
アレンは女性の持っている果物を指差した。
「新鮮なやつはもっと鮮やかな黄色で、芯の色がもっと濃い」
アレンは女性に近付くと、果物を奪い取った。
女性はただ呆然としている。
「実も固いし、香りも全くしない」
アレンは女性に果物を放り投げた。
女性は慌てて両手で受け取った。
「ふん、あんたには何も売らないよ!」
女性は舌打ちをすると、椅子に勢いよく座った。
アレンはため息をつくと、再び歩き始めた。
そこら中で笑い声が響くなか、淡々と歩き続ける。
街の出口には兵士がおり、鉄で出来た門の左右に立っている。
「お、街を出るのか?気を付けてな!」
身長の大きい兵士が声をかけてくる。
しかし、アレンは応じることなく無言で通り過ぎた。
愛想のない態度に、兵士の頭に血が昇る。
「おい!無視かよ?」
「やめとけ、あいつには関わらない方がいいって」
目のつり上がった兵士がなだめる。
それでも、まだ怒りが収まらないようだ。
「あいつハンターなんだけどよ、殺しの依頼しか受けないらしいぜ」
アレンに聞こえないよう、小声で話す。
「ハンター?」
「ああ、血に飢えてる殺人鬼だよあいつは」
「なんでそんなのがこの街にいるんだ?」
「さぁな、でもあいつのお陰で街の犯罪が減ってるのも事実だ」
「そうだとしても、あいつ何を考えてるのかわからねぇし――」
兵士がアレンに目を向けると、アレンが立ち止まり顔だけを兵士達に向けている。
その目には光がなく、不気味ささえ感じるほどだ。
「おい、もしかして聞こえてたんじゃ……」
「まさか、あそこまで相当距離があるぞ」
アレンと兵士の距離は100メートルは離れている。
しかも小声だったので聞こえるとは思えない。
兵士は恐怖を感じ、背中に冷汗が流れる。
しかし、アレンは顔を前に向けるとゆっくりと歩き始めた。
兵士たちに安堵の表情と共にため息がこぼれた。