リアル育成ゲーム
子供が欲しい?
まだ十八歳ですのに?
まぁいいでしょう
ご希望のコースはどうします?
妊娠コースから三歳コースまでありますが
はい?妊娠コースは誰かとセックスしなければいけないのか?
ご安心ください、見知らぬ誰かと無理に性交渉する必要はありません
性交渉を望まれるのであれば、こちらで用意した男性と性交渉を交わしていただきますが
あ、性交渉はなしで。了解いたしました
では、いくつか約束してください
決して、子供を煩わしいと思わないでください
少しでも煩わしいと思えばどうなるか、分かりませんよ?
ゲームとはいえ子供は生きています
ちゃんと成長し、感情を持っています
覚悟がないのなら、まだキャンセル出来ますよ?
そうですか、欲しいですか
では、登録完了です
性交渉なしの妊娠コースですので、登録完了した時点で、貴方は妊娠しました
では、充実した生活を聴こえる。聴こえる。
お父さんとお母さんの怒鳴り声。
――子供なんておろせ!
――嫌よ!絶対産むんだから!
――だったら別れるからな、一人で勝手に育てろ!
――ちょっと待ってよ、そんなの酷いじゃない!
――知るか!とにかく子供なんてごめんだ!
嗚呼、またこの会話。また、失敗しちゃった。
なんで、大人は勝手なことばっかり。
ただ、生きたいだけなのに。
――こんなことなら、子供が欲しいなんて言わなきゃよかった。もういらない!お腹の中から出てって!
紹介屋さんが言ってた。いらないって言われたら、出てっていいって。
ぼくだって、“お母さん”みたいなお母さんいらないもん。「…………やはり、こうなってしまいましたか」
だから、注意したでしょう?煩わしいと思ってはいけないと。
最初に訪ねたでしょう?本当に育てる覚悟はあるのかと。
最近の女には覚悟が足りません。
恋人との絆を繋ぎたいがために、安易な気持ちで子供を産もうなど。
彼らは産まれる前に母親に手によって殺された、哀れな子供達。
そういう負の感情には敏感なのですよ。
彼らとて母親を選ぶ権利はあります。
だから、子供がいらないと母親を捨てた瞬間、母親は急激に成長する子供に腹を引き裂かれ殺される。
自分が子供にしようとしたことが、自分に還ってきてしまうのです。
「この母親は、駄目でしたか」
手を伸ばしてきたので、抱き抱えてあげると笑って喜びました。
「毎日喧嘩の声ばっかり、聴こえてくるんだもん……」
「そうですか……やはり、私からよい母親を見つける必要がありますね。私が、幸せにしてくれる母親を見つけましょう」
「ほんとに?約束だよ?」
「ええ」最近こんな噂をよく聴く。
紫のスーツに身を包み、紫の帽子を被り、黒いステッキをついた男が子供が欲しいと願う女の元に現れ妊娠をさせ、中絶されて命をなくした子供の魂を託していくという噂。
しかし中絶しようとすると、子供から報復されるらしい。
最近腹を裂かれ殺された女が多いのは、その噂のせいだと。
その噂は本当のことだと思う。
私の友人が子宮の癌で妊娠出来ない身体となったのに、妊娠をしたから。
今は家族三人、幸せにしている。
もう一人の友人は妊娠二ヶ月目を迎えた日に、腹を裂かれ殺された。
不可解なのは、腹の内側から引き裂かれていること。
つまり、胎児が内側から腹を引き裂いたということになる。
だが、そんなことあり得ない。
けど、噂が本当なら?
噂の真偽はどうあれ、安易に性交渉など行わないことだ。
リアル育成ゲーム 了