彼らは――そして「星」を見る<アンドロメダ銀河■■■宙域――異星文明遺跡【■■■■■■】にて>
その日、■■■■■(発音不能な名称)は仲間とともに例の遺跡内に建造された工廠で忙しく働いていた。
その彼?は最新鋭の六脚機械体であり、だからこそ誰よりも効率よく作業をこなしていた。
彼?の身分は宇宙軍■■■■■(発音不能な名称、彼の名前とは別)人の中でも最高位の遺跡研究管理者であり、別に自分自身が働く必要もないのだが……、
「……うむ、構成素材の各種係数は想定通りだな……。これならば■■■(エネルギー単位)以上の破壊でも起こらない限り組織自壊は始まらないだろう」
彼?は満足げに考えると——、姿勢制御噴射でその場から離れる。
そうして宙に浮かぶ彼?の目に、工廠内部に収まっている■■■■■■航宙艦の壁面が美しい文様を示した。
その工廠は——工廠と呼ぶには余りにも広かった。
そもそも、この大きさの工廠など——地球人類圏では有史以来存在しえない、と断言できる。
——なぜなら、その工廠で建造されているのは——、
日本人が見れば「桜の花?」と答えるであろう形状の——、
その花びらの先端と反対側の先端までの距離が3200kmほどもある、絶望的な大きさの航宙艦だったからである。
——これほど巨大な航宙艦など、少なくとも西暦3300年までの人類の歴史には存在しない——と断言できる。
■■■■■はそれを見て、感情表現として発光表示しながら眺める。
「ああ……、私たちの歴史——、そして私たち自身すら収めることのできる【書庫】……。■■■(時間単位、万年)を超えて未来へ残すことのできる……半永久的に存在し続ける■■■■■■書庫艦が後■■■■(時間単位、数カ月)で完成する……」
——これこそは我ら全てを記録する大記録媒体!!
機体発光が明滅してそれが周囲の同族たちにも連鎖する。
この時の彼らは——、ただ純粋に異星文明の遺産に喜び……そして至る未来に気がついては居なかった。
◆◇◆
かの工廠が作られた異星文明遺跡【■■■■■■】——、その最深部の施設にまた別の■■■■■人が居てその四本の腕でその壁面を切り開いて、その奥にワイヤーに見えるインターフェイスを挿入していた。そして——、
「ふむ……、しかしこの構造体の損傷保護は厄介だな……。一応、■■■(エネルギー単位)程度のビームなら切り裂けるが……。む……再生する前に……」
その壁面の金属が蠢きながら閉じてゆく。インターフェイスを引き抜いてそして困った感情で発光した。
「……ああ、本当に厄介だな……。まあ、この文明を生み出した存在は……不定形型知性体で、完全に精神文明偏重だったらしいからな……。物理的コンソール自体がないのは仕方がないのか……。ならば……、ある意味現在の我々とは近いとも言えるが……」
現在までの調査で、この遺跡を生み出した知性体が、バクテリア的生命機能が特殊な相互作用で集合した知性体——、である事がわかっている。
さらに——極限まで発展した精神文明によって、その雲状の実体すらほぼ意味をなさなくなり、ある意味で【情報生命】と化していたのである。
その上でのこの遺跡の機能——、
「ふう……、惑星型願望実現器……、そうとしか思えない機能……」
その技術はあまりに常識を超えていた。
そして、その機能のうち約0.00000000001%程度を再起動できた自分たちは、例の今まで製造したこともない衛星規模の【書庫艦】を建造しようとしている。
まさしく自分たちは至上の財宝を手に入れたに等しい。
——言ってしまえば、このまま解析が進めば【あらゆる望みが叶う】のだから。
しかし——である。
「……ここまでの技術でなぜ滅ぶ? 損傷保護のせいで■■(時間単位)前のものかも分からぬが……、なんの損傷もないコレを残して消えた理由は? いや……それも損傷保護で治ってしまうのかもしれんが……」
——あるいはコレを捨てて何処かに逃げた? なぜ? どうして?
その■■■■■人はただ深い思考に飲まれてゆく。なんらかの結論に至る気配はなかった。
——そして、後に……その結論が最悪の形で顕現するのである。
◆◇◆
あれからどれだけ経ったのだろうか?
時間経過を示す機能に不具合を得ていた彼?は、静かに■■■■■■書庫艦が外部の情報として送ってくるものを見つづける。
——事態は最悪だった。
主星を含めた■■■■■人の文明圏が飲み込まれてゆく。
宇宙空間からしみ出すように現れるソレは、凄まじい数でこちらの戦闘航宙艦を叩き落としてゆく。
別にこちらの航宙艦が弱いのではない——、なぜなら彼らのソレはある意味で同じ存在だからだ。
ただ、ソレは無数に生まれて、そしてまるで生体組織のように回復してゆく。まあ、あれほど回復力の早い生体組織は見たことがないが。
こちらは主星が失われた時点で■■■■■人として終わりを迎えている。
■■■■■■書庫艦に情報と機器を退避できなかった時点で「機械体を再生産できる技術」を喪失してしまった。
もはや自分たちは——今の身体を使い潰してのちに静かに書庫内のデータになる——未来しかない。
技術の再生は絶望的だった。
いや……、我々は諦めてはいけない。
今我々にとって方舟となった■■■■■■書庫艦は、特別な損傷がなければ■■■■■■(時間単位、1000万年)すら乗り越える事が出来る。
その果てに——、自分たちに近い異星文明を探し出せば……、
……そうして彼?は映像に映り込む【生体組織の塊になった異星文明遺跡】を見つめる。
それは——あまりに異様な星型の生命体にも見えて……、
「終末の星……」
かつての文明を滅ぼし、そして今■■■■■人の文明すら滅ぼした——、文明を終わらせる星型神性。
それは不気味に輝きながら——、
——アンドロメダ銀河全体に、ゆっくりと……、そして確実な速度で、その「滅びの概念」を広げていったのである。




