表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

UCCR-003:返答しないもの

【ファイル番号】

UCCR-003


【対象】

通称:ムコウ


【分類】

不明(非応答型存在)


【発見場所】

不定(複数報告あり)


【記録形式】

対話記録(再構成)+通信ログ+観察メモ


---


【対話記録】


※本記録は音声データに明確な“対象の発話”が確認されなかったため、

記録者の発言および状況証拠から再構成されている。


---


記録開始。時刻 不明。


俺「……そこにいるんだな」


(無音)


俺「応答しなくていい。聞こえてるのは分かってる」


(無音)


俺「質問する。お前は何だ?」


(無音)


俺「……なるほどな」


(数秒の沈黙)


俺「そういうタイプか」


(無音)


俺「じゃあ、別の聞き方をする。ここにいる理由は?」


(無音)


俺「……分かった。いや、分からされた、か」


(短い笑い声)


俺「これ、会話になってるよな?」


(無音)


俺「……ああ、そうか。そういうことか」


(長い沈黙)


俺「俺が、勝手に補ってる」


(無音)


俺「お前は最初から、何も言ってない」


(無音)


俺「でも、意味は伝わってる」


(無音)


俺「……違うな。“伝わってると思わされてる”」


(ここで環境音がわずかに変化)


俺「じゃあ確認する。今の理解も、お前がやってるのか?」


(無音)


俺「……答えないのに、答えになる」


(記録者の呼吸が浅くなる)


俺「これ、危ないな」


(無音)


俺「言葉を使ってないのに、意味だけが入ってくる」


(無音)


俺「つまり――」


(ここで長い沈黙)


俺「お前、“言葉の外側”にいるな」


(記録ノイズ)


俺「……それで成立するなら、何でもできるだろ」


(無音)


俺「いや、違う。もうやってる」


(ここで足音のような音)


俺「……おい、今動いたか?」


(無音)


俺「いや、違う。これは――」


(記録が一瞬途切れる)


俺「……俺が、動いたのか?」


(無音)


俺「……おかしいな」


(小さく笑う)


俺「さっきから、全部おかしい」


(無音)


俺「でも、ちゃんと“会話してる感覚”だけはある」


(無音)


俺「それが一番おかしい」


(ここで記録が大きく歪む)


俺「なあ、お前――」


(長い沈黙)


俺「……今、どこにいる?」


(無音)


俺「……そうか」


(ここで極端に小さい声)


俺「もう、ここか」


(記録終了)


---


【通信ログ】


本記録の音声データを解析した結果、

対象と思われる“発話音声”は一切検出されなかった。


すべての会話は、

記録者の単独発話として記録されている。


しかし不可解な点として、

記録者の発言内容は明らかに**対話形式を前提として進行している**。


また、音声波形において、

特定の無音区間に微細な揺らぎが確認されたが、

言語的情報は一切含まれていない。


---


【観察者メモ】


これは“沈黙する存在”ではない。


そもそも――

**最初から何も発していない。**


にもかかわらず、

記録者は一貫して「応答を受け取っている」と認識している。


つまりこれは、

会話ではなく


“理解の誘導”


である。


さらに危険なのは、

この現象が音声データを通しても再現される可能性だ。


実際、本記録を書き起こしている最中、

いくつかの箇所で


「返答を聞いた気がした」


---


【編集部注】


本記録の閲覧者から、以下の報告が複数寄せられている。


・無音部分に「意味」を感じる

・読んでいる途中で“会話している感覚”になる

・文章に存在しない内容を“理解した気になる”


なお、これらの報告はすべて、

**同一の記述を指していない。**


つまり、各閲覧者が

“異なる内容を受け取っている”可能性がある。


最後に一点。


本記録の最終行において、

一部の閲覧者から以下の追加記述が報告されている。


> 「今、後ろにいる」


ただし、原本にはその記述は存在しない。


---


(以上、UCCR-003)


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

水はどこにでもあります。だからこそ、どこにでも“繋がっている”のかもしれません。


もし水辺に立つことがあれば、少しだけ気をつけてください。

――見られているのは、あなたの方かもしれません。


次の記録も、すぐに提出します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ