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読める鎮痛薬  作者: 九重有
社会生活に疲れた人へ

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9/14

二通目 いい人のまま、少しずつ削れていく




社会生活に疲れた大人へ。


あなたはたぶん、

「いい人」でいるのが上手です。

空気を読む。

相手の立場を考える。

波風を立てない言い方を選ぶ。

その場が丸く収まる方を、自然に取ってしまう。


それは、弱さじゃない。

むしろ、能力です。

誰かの感情を察して

先回りできる力。

集団の中で、摩擦を減らせる力。

社会は、そういう人に支えられて回っています。


でも、その力には

あまり知られていない副作用がある。


「自分の番」が、後回しになること。


本当は断りたかったのに

まあ、いいかと思って引き受ける。

少し傷ついたのに

気のせいだと笑って流す。

疲れているのに

大丈夫な顔ができてしまう。


できてしまうから

周りは、できる前提で頼ってくる。

あなたも

「期待されている自分」を

裏切れないまま、応えてしまう。


そうやって

いい人のまま

少しずつ、削れていく。


削れていることに

気づきにくいのが、いちばん厄介です。

大きな音はしない。

劇的な出来事もない。

ただ

「前より回復に時間がかかる」

「前ほど、楽しいが続かない」

それくらいの変化で進んでいく。


誰にも迷惑をかけていない。

ちゃんと生活も回っている。

だからこそ

「自分がしんどい理由」が

分からなくなる。


でもね。

いい人でい続けることは

無限にはできない。

それは人間の設計じゃない。


やさしさは

使い切るものじゃなくて

戻ってくる道が必要なものです。

戻ってこないやさしさは

いずれ、疲労になる。


今日は、ひとつだけ

確認してみてください。


最近

「本当は嫌だったけど、言わなかったこと」は

ありませんでしたか。


思い出せなくてもいい。

思い出したくなくてもいい。

ただ

そういう問いを向けられる自分でいることが

削れきらないための、縁になります。


社会は

「いい人」を褒めるけれど

「無理をしなかった人」は

あまり評価しない。

だから、無理をやめるのは

少し怖い。


でも

無理をしなかった日は

あなたがあなたを裏切らなかった日でもあります。


社会生活に疲れた大人へ。


やさしさは

減らさなくていい。

ただ

向ける先を、少しだけ

自分にも戻していい。


今日は

「いい人」でいなくても

ここにいるだけで、十分です。

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