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読める鎮痛薬  作者: 九重有
社会生活に疲れた人へ

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13/14

六通目 壊れる前に、戻っていい



社会生活に疲れた大人へ。


ここまで来ると

「まだ大丈夫」「もう少し頑張れる」

その言葉が、どれだけ自分を支えてきたかも

どれだけ自分を追い詰めてきたかも

両方、分かっている頃だと思います。


壊れる人は

ある日突然、壊れるわけじゃない。

ずっと前から

小さな無理を積み上げて

その上で、普通の顔をしてきた人です。


辞めたいわけじゃない。

投げ出したいわけでもない。

ただ

このまま続けたら

自分が自分じゃなくなる気がする。

その予感が

静かに胸に残っている。


社会は

「続ける人」を評価します。

「踏ん張る人」を褒めます。

だから

離れること

小さくすること

やめること

それらは全部

負けみたいに扱われる。


でもね。

続けることだけが

強さじゃない。


戻る、という選択があります。


元の自分に戻る。

生活の大きさを戻す。

期待の量を戻す。

無理をする前の

呼吸の深さに戻る。


戻るって

後退じゃありません。

壊れる前の位置に

自分を回収しに行くことです。


たとえば

少し距離を取る。

役割を減らす。

ペースを落とす。

全部を説明しない。

全部に応えない。


それは逃げじゃない。

回復の技術です。


もし今

「辞めたい」「消えたい」

そんな言葉が頭をよぎるなら

それは意志じゃなくて

警報です。

心が

「これ以上は危ない」と

教えてくれている。


壊れてから戻るのは

とても大変です。

時間も

体力も

信頼も

自分への感覚も

たくさん使う。


だから

壊れる前に

戻っていい。


誰かに許可をもらわなくていい。

正当化できなくていい。

理由が弱くてもいい。


あなたが

「これ以上は無理かもしれない」と感じたなら

それは、十分な理由です。


社会生活に疲れた大人へ。


続けられなかった自分を

恥じなくていい。

守ろうとした自分を

誇らなくていい。

ただ

生き延びようとした事実を

静かに認めてあげてください。


戻っていい。

壊れる前なら

まだ、選べる。

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