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読める鎮痛薬  作者: 九重有
社会生活に疲れた人へ

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12/14

五通目 やさしさだけでは、回らない



社会生活に疲れた大人へ。


あなたはたぶん

できるだけ波風を立てずに生きようとしてきた人です。

言い方を選んで

相手の事情を考えて

場の空気を整えて

「まあ、私がやればいいか」と思ってしまう。


それで助かった人がいる。

救われた場面も、たくさんある。

あなたのやさしさは本物です。


でもね。

やさしさだけで人間関係を回そうとすると

最後に足りなくなるのは

だいたい、あなたの分です。


やさしい人は

線を引くのが下手です。

引いたら冷たい気がして

引いたら嫌われる気がして

引いたら壊れる気がして

だから、引かない。


そして気づくと

頼まれごとが増えて

連絡が増えて

気遣いが増えて

「私が悪いわけじゃないのに、私だけが疲れていく」

そんな形になっていく。


線を引くって

拒絶じゃありません。

相手を遠ざけることでもない。

あなたがあなたを守る

最低限の枠を作ることです。


たとえば

すぐ返事をしない。

すぐ決めない。

その場で「はい」と言わない。

一回持ち帰る。

「確認してから」と言う。

「今日は難しい」と言う。


これらは全部

相手を傷つけるためじゃない。

あなたが倒れないためです。

倒れないあなたのほうが

結果的に、関係は続く。


そして、忘れないでほしい。

あなたが線を引いたときに離れていく人は

あなたのやさしさが好きだったんじゃなくて

あなたの“都合のよさ”が好きだった可能性があります。

それは、とても寂しいけれど

あなたの価値とは関係がない。


線を引くのが怖い日は

こう考えてみてください。


「私は、私の担当者でもある」


誰かの機嫌の担当者になる前に

自分の心の担当者でいていい。

あなたが倒れたら

あなたの生活は誰も責任を取れない。

責める人はいても

代わりに生きてはくれない。


社会生活に疲れた大人へ。


やさしさを捨てなくていい。

ただ

やさしさを、切り売りしないでください。

あなたの分を残したやさしさは

もっと長く、ちゃんと届くから。

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