四通目 会社の言葉は心を濁す
社会生活に疲れた大人へ。
あなたが苦しくなるのは
仕事量だけじゃないと思います。
言葉でも、疲れる。
しかもそれは、殴られるような言葉じゃなくて
いかにも正しい顔をした言葉です。
成長。
主体性。
前向き。
当事者意識。
挑戦。
改善。
コミュニケーション。
どれも、間違っていない。
でも、疲れている日にそれらを浴びると
心の中に薄い砂が入ったみたいに
じわじわと濁っていくことがある。
たとえば「成長」。
あなたが休めない日に
「もっと成長しよう」と言われると
休むことが、後退みたいに感じる。
今の自分が足りないと言われた気がして
息を整える前に
また走ろうとしてしまう。
「主体性」も似ています。
本当は、判断材料が足りなくて
責任だけ増えているのに
「自分で考えて」と言われると
助けを求めることが
甘えみたいに見えてしまう。
「前向き」も。
前向きって
体力がある人の姿勢です。
気力が削れているときに
前だけ向かされると
置いてきた痛みが
ずっと背中を引っ張る。
会社の言葉は
人を動かすために磨かれています。
だから、便利です。
便利だからこそ
個人の事情を消してしまう。
あなたの今日の状態や
あなたの体温や
あなたの限界を
きれいに均してしまう。
そういう言葉に疲れたとき
あなたが悪いわけじゃない。
言葉が、あなたの生活を守るために作られていないだけです。
会社の言葉は
会社が回るための言葉です。
あなたが回るための言葉じゃない。
だから、ここで一つだけ
あなたのための言葉を持ち直してほしい。
「できない」じゃなくて
「いまは難しい」
「無理」じゃなくて
「余裕がない」
「私が弱い」じゃなくて
「私の容量が埋まっている」
言い換えは、逃げじゃありません。
自分を雑に扱わないための
翻訳です。
会社の言葉は、強い。
強い言葉に包囲されると
自分の言葉が小さくなる。
だから、翻訳していい。
自分の中でだけでもいい。
あなたの輪郭を守るために。
社会生活に疲れた大人へ。
会社の言葉に疲れた日は
あなたの心が曇ったわけじゃない。
あなたの心が、ちゃんと反応している。
その反応を
鈍らせなくていい。




