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ダンジョン・アカデミア  作者: 綾瀬蒼


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08.天才の指導と影のマナの制御

1. 個人指導の開始

レオンの退学処分は回避されたが、彼の学院生活は一変した。他の生徒との合同授業は一部を除き免除され、代わりにリゼルとのマンツーマンの特訓が始まった。それは、グレイヴ教授の命令であると同時に、リゼルにとっては「異質なサンプル」を徹底的に分析する絶好の機会だった。

特訓の場は、学院の敷地奥にある、厳重な結界に守られた訓練室。

「ここでの目標はただ一つ。貴方のコアに宿る『影のマナ』が暴走せず、私の理論通りに機能することだ」

リゼルは、白いローブを翻し、冷徹に言った。

「貴方のマナは、圧縮されると『影のマナ』の特性を帯び、強烈な破壊力を生む。だが、その過程で周囲のマナを取り込みすぎるため、制御を失う。貴方が行うのは、そのマナの『吸い上げ』を、意図的に、しかし最小限に行う訓練だ」

レオンは戸惑った。「そんなことが可能なのか?俺は繊細な制御が苦手で……」

「可能だ。なぜなら、貴方の『荒々しい一点突破』は、既に一つの『理論』を構成しているからだ」リゼルは、大きな魔力解析盤に、複雑なマナの流れを示す図を投影した。

「貴方は無意識下で、自身のマナを放出する際に、周囲の環境マナを極端に不安定な状態で巻き込んでいる。我々はまず、その巻き込みの『トリガー』を特定する」

2. 破壊と理論

特訓は過酷だった。リゼルは決して手を抜かない。

* 訓練1:マナの圧縮限界テスト

レオンは、指先にマナを集める。集中すればするほど、マナは黒ずみ、周囲の空気が重くなる。リゼルは解析盤を見つめながら、冷静に限界点を告げる。

「あと2パーセント。そこで止めろ。制御を失うな」

少しでもオーバーすると、マナは暴発し、訓練室の結界に雷鳴のような衝撃を与える。

* 訓練2:精密誘導テスト

リゼルは、訓練室内に小さな光のマナ球を無数に浮かばせる。レオンは、そのマナ球を破壊せず、その隙間だけを狙って低威力の「ライト・ボルト」を放つよう命じられた。

レオンが狙いを定めるたび、光のマナ球は吹き飛ぶ。

「無駄だ。貴方の『ライト・ボルト』は、まるで手綱のない暴れ馬だ」

「くそっ、分かってる!だけど、どうすればいいんだ!」レオンは苛立ち、叫んだ。

リゼルは感情なく答えた。「理論を理解しろ。貴方のマナは、制御しようとするほど反発する。貴方のコアが異質なマナを受け入れた瞬間、それはもう、従来の魔法ではない。貴方が必要なのは、力を『抑える』ことではなく、『暴走の予兆を、暴走させずに定着させる』技術だ」

3. 故郷からの報せと決意

数週間の特訓が続いたある日。

レオンは、学院の郵便局で故郷の村からの手紙を受け取った。その内容は、彼の心を再び焦燥感で満たした。

> 『レオン。村の守りの結界が弱まっている。あのダンジョンから、最近、以前よりも強い魔物が現れるようになった。どうか、急いで学院で力をつけてくれ。お前の力が、早く必要だ……』

>

手紙を握りしめ、レオンは決意を新たにした。リゼルの指導は重要だが、彼女のペースに合わせていては間に合わない。彼女はあくまで「研究」をしているだけだ。

その夜、特訓を終えたリゼルに、レオンは問いかけた。

「リゼル。俺の故郷のダンジョン、最近、魔物の質が変わったそうだ。あれは、俺たちが目撃した『影のマナ』の影響だろうか?」

リゼルは解析盤から目を離さず、冷たく答えた。「可能性は高い。影のマナは、ダンジョンのマナを活性化させ、生み出す魔物を変質させる。貴方の故郷の状況は、研究対象として興味深い」

「研究対象、か」レオンは静かに言った。「リゼル。俺は、あなたの実験材料になっている時間はない。俺は自分の力で、故郷を救うための訓練をしたい。あなたの理論は重要だが、俺はもっと実戦的な力をつけなければならない」

リゼルは初めて解析盤から顔を上げた。その目に宿るのは、わずかな怒りと、純粋な失望だった。

「愚かだ。貴方の暴走は、貴方の故郷を救うどころか、逆に滅ぼす。貴方の力は、私の完璧な理論の下にあって初めて、価値を持つのだ」

「俺の価値は、俺が決める」レオンは強く言い返した。「俺の故郷は、貴方の研究テーマじゃない!」

レオンの言葉に、リゼルは静かに、しかし絶対的な冷気を放った。

「……分かった。ならば、私は貴方に、二つの選択肢を与える」

リゼルは、手を前に出した。

「一つ。貴方は私の指導に従い、影のマナを完璧に制御する方法を学ぶ。これが最も安全で、最も強力な覇王装備に近づく道だ」

「そして二つ目」彼女の目が鋭く光った。「貴方は私の元を去る。その場合、私は学院に、貴方の制御不能な危険性を正式に報告する。貴方は二度とダンジョンに入ることができなくなるだろう」

レオンは、決断を迫られた。リゼルに従うか、すべてを失うか。彼の未来は、この天才少女の手に握られていた。

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