40.永遠の調和、旅立ちの空
1. 旅立ちの朝
学院の防衛戦から数ヶ月後。大陸には穏やかな春が訪れていた。レオンとリゼルは、学院の正門に立っていた。レオンの背には、かつてのボロボロの装備ではなく、五属性の光を静かに内包する、完成された「覇王の装束」が纏われていた。
「忘れ物はありませんか、レオン?予備のマナポーションに、私の解析盤の予備バッテリー、それから……」リゼルは、以前よりも少し活動的な旅装束に身を包み、慌ただしく荷物を確認している。
「大丈夫だ、リゼル。必要なものは全て、このコアに刻まれている」レオンは微笑み、リゼルの頭を軽く叩いた。
二人の前には、広大な世界が広がっていた。抑制が解かれたことで、大陸のあちこちで古代の植物が芽吹き、マナの精霊たちが戯れる光景が見られるようになっていた。それは、かつての殺伐とした魔法社会とは異なる、生命力に満ちた光景だった。
2. 覇王の残した遺産
学院は、レオンの旅立ちを静かに見送った。学園長室の窓から、彼らの後ろ姿を見つめる学園長とクロード。
「彼は、本当の意味で『覇王』になったな。力で支配する者ではなく、力で全てを繋ぐ者として」学園長が呟く。
「ええ。彼が残した『五極の調和理論』は、これからの魔法学の基礎になるでしょう。リゼルちゃんが旅先から送ってくれるレポートが楽しみですよ」クロードは、新しい杖を手に、満足そうに頷いた。
3. 世界の果てで見つけた答え
旅を始めて数年。レオンとリゼルは、かつてレオンが修行した「魔女の炉」の跡地を訪れていた。そこは今や、豊かな緑に覆われ、平和な村が再建されていた。
「レオン、見てください。この村のマナの安定度は、理論上の完璧な数値を維持しています」リゼルが解析盤を見せながら、誇らしげに笑う。
レオンは、村の子供たちが小さな魔法を使って花を咲かせている様子を見守っていた。かつて、自分を「異端」として追い出した村と同じ場所で、今、魔法は笑顔を創るための力として使われている。
「リゼル、俺は最初、自分を救うために力が欲しかった。でも、今はこの力が、誰かの日常を守るためにあることが、何よりも嬉しい」
レオンの手のひらで、五色の光が小さな精霊となって飛び回る。影のマナは、もはや恐怖の象徴ではなく、全ての色彩を優しく引き立てる背景となっていた。
4. 完結:調和された世界へ
夕暮れ時、二人は次の目的地へと歩みを進める。
物語はここで一区切りを迎えるが、レオンとリゼルの「調和」の旅に終わりはない。世界にマナがある限り、彼らはそのバランスを整え、新しい可能性を切り拓き続けるだろう。
かつて「影の異端者」と呼ばれた少年は、今や「世界の調和を司る覇王」として、歴史の中にその名を刻んだ。そして、彼の隣には常に、その力を支え、導き続けた、一人の天才学者がいた。
彼らが歩む道の先には、常に明るい、五色の虹が架かっている。
(完)




