37.始原の炉、システムの心臓部を巡る攻防
1. 始原の炉への突入
レオンは、学園長から始原の炉が抑制システムの心臓部であると聞き、リゼル、そしてクロードと共に学院の地下深くへと向かった。炉は、学院の最古の地下区画、厳重に封印された古代の施設内に存在していた。
「リゼル、クロード先輩。始原の炉の中枢には、五極の調和マナを持つ俺しかアクセスできないはずです。しかし、解放派の残党は、炉を破壊することで、システムを強制的に『解放』させようとするでしょう」レオンは、覚悟を決めた表情で言った。
「私の解析では、炉の中枢部は、古代マナで構築された『共鳴構造体』です。少しでもマナ的な衝撃を与えれば、世界中にマナが暴走する可能性が高い」リゼルが警告する。
クロードは、自身のマナ炉を最大限に強化し、レオンの後方支援に徹した。「君の五極の調和こそが、この世界を救う唯一の希望だ。我々が、君が炉に到達するまでの『時間』を稼ぐ!」
しかし、始原の炉への最後の通路は、既に解放派の残党によって占拠されていた。通路の壁には、破壊を目的とした複雑な時限発動型の術式が刻まれており、中央には、ゲイボルグの敗北を知らされた翠緑のストラテジストが、冷徹な表情で待ち構えていた。
2. 知将の最終戦略と時間稼ぎ
「レオン・ハートフィリア。私の最後の戦略は、君の『速度』と『調和』、そして『良心』の全てを封じる」ストラテジストは、通路の中央で静かに言った。「君が、私と戦い、私の張った術式を解除している間に、私の部下たちは、炉の中枢部を破壊する」
ストラテジストは、通路の天井と床に仕掛けられた術式を起動させた。それは、レオンの五極の調和マナを感知すると、そのマナの『位相』をわずかにずらし、自壊的な共鳴を引き起こすように設計されていた。
「君が覇王の力を使えば使うほど、君のマナコアは崩壊に近づく。使わなければ、時間がなくなり、炉は破壊される。これが、君への最後の『詰み』だ」
ストラテジストの術式は、レオンの五極調和という完成された力こそが、最大の『弱点』となるように設計されていたのだ。
3. クロノスの献身、捨て身の防御
レオンが術式を解析しようとマナを集中させた瞬間、ストラテジストの部下たちが、炉へと続く最後の扉を爆破し、突入を試みた。
「間に合わない!レオンくん、君は先へ行け!ここは私が食い止める!」
クロードは、レオンに代わってストラテジストと対峙した。彼は、自らのマナ炉の出力を限界突破させ、自身の全てのマナを『時間遅延の結界』へと注ぎ込んだ。
「クロード先輩!」リゼルが叫ぶ。
クロードの結界は、ストラテジストの複雑な術式の発動時間を、一時的に数秒間だけ停止させた。これは、彼の命とマナコアを危険に晒す、捨て身の行為だった。
「リゼルちゃん!レオンくん!急げ!この結界は、長くは持たない!」クロードは、血を吐きながら叫んだ。
レオンは、クロードの献身を無駄にしないため、一瞬の躊躇もなく、五極の調和マナを全開にし、ストラテジストの術式を無視して、最後の扉を突破した。
4. 炉の中枢部と最後の刺客
レオンとリゼルが炉の中枢部に到達すると、そこには、古代マナによって複雑に構築された巨大な「中央制御装置」が光を放っていた。装置の周囲には、解放派の残党が、破壊術式を完成させようと、最後の作業を急いでいた。
そして、その残党を率いていたのは、レオンが予想もしなかった人物だった。
「久しぶりね、レオン」
通路の影から現れたのは、かつてレオンを学院から追い出そうとした、元学院のエリート魔術師、アルベルトだった。彼は、顔に深い傷を負い、その手には、解放派のマナで強化された破壊術式の『起爆装置』を握っていた。
「アルベルト…なぜお前がここに!」レオンは驚愕した。
「解放派は、私と家族の安全を約束してくれた。そして、彼らの理想は間違っていない。この世界は、『偽りの自由』に支配されている!私は、彼らの手で、世界に真の自由を取り戻す!」アルベルトの瞳には、狂気と憎悪が混ざり合っていた。
アルベルトは、レオンの覇王の力を警戒し、破壊術式が仕掛けられた炉の中枢部へと飛び込んだ。
5. 究極の選択と覇王の決意
「レオン、アルベルトを追ってはいけない!炉の中枢部に入れば、彼の破壊術式が発動し、貴方の五極の調和マナと共鳴し、システムが暴走します!」リゼルが制止する。
アルベルトは、炉の中枢部の巨大な共鳴構造体に、破壊術式の起爆装置を接続させた。
「レオン!もう遅い!抑制システムは、私の手で解放される!この世界は、マナの奔流によって、真の自由を得る!」アルベルトは、起爆スイッチを押そうとした。
レオンの心臓は激しく鼓動した。彼の前には、「世界の自由」を求めるアルベルトと、「世界の安定」を求める学園長の理想が、最終的に衝突していた。
(俺の力は、調和だ。世界を暴走させても、抑制を続けても、それは調和ではない!)
レオンは、アルベルトを破壊することを選ばなかった。彼は、自身の五極の調和マナを、始原の炉の中枢へと一気に流し込んだ。
超収束貫通型――最終奥義、『世界調和』!!
レオンのマナは、アルベルトの破壊術式と、炉の共鳴構造体、そして世界全体のマナ抑制システムの中枢に同時アクセスし、「抑制の解除」と「マナの暴走の防止」という、相反する二つの命令を同時にシステムに書き込んだ。
次の瞬間、炉の中枢部から、五色の光が世界全体へと放たれた。




