33.大地の迷宮、最後の核と古代の防壁
1. 四属性の安定と覇王装備の真の姿
天空の迷宮を脱出したレオンは、その足で最後の核が眠る「大地の迷宮」へと向かっていた。彼のマナコアは、調和の器の作用により、影、炎、水、風の四つの極端な属性を完全に統合し、安定させていた。
「驚くべきことです、レオン。貴方のコアは、もはや『調和された覇王装備』の基盤として機能しています」リゼルは、移動中にレオンの解析結果を見て、興奮を隠せなかった。「貴方のマナは、以前の蒸気のマナよりも遥かに高密度で、必要に応じて任意の属性に瞬時に『変換』できるようになっています」
レオンは、掌にマナを集中させた。一瞬で漆黒の影が燃える炎に変わり、次の瞬間には柔軟な水となり、そして次の瞬間には透明な風へと変じる。これは、単なる属性の適合ではなく、マナの『位相変換』を可能にした、真の覇王の力だった。
「残るは『土の核』。これを手に入れれば、四つの元素が揃い、覇王装備は完成する。解放派の動きはどうだ?」レオンは、決戦を前に冷静だった。
「ストラテジストはタワーで敗北した後、完全に沈黙しました。クロード先輩の情報でも、解放派の残存戦力は、最後の核を防衛するために、大地の迷宮に全てを集中させているようです」
2. 大地の迷宮と、極度に重いマナ
大地の迷宮は、大陸内陸の巨大な山脈の地下深くに存在していた。内部は岩盤と鍾乳石で構成され、通路は極めて狭く複雑だった。そして何よりも、ダンジョン全体が、異常に『重く、密度が高い』土のマナに覆われていた。
迷宮に足を踏み入れた瞬間、レオンたちは、全身に重力が増したかのような圧迫感を感じた。
「これは…!通常の土のマナとは違う!マナが、私たちの体を『拘束』しようとしている」リゼルが息苦しそうに言った。
「これが、土の核が持つ『重力』と『固定』の特性か。俺の風のマナを使っても、重すぎて体を持ち上げられない」レオンは、風のマナを試みたが、すぐに土のマナに吸収され、無力化された。
この環境では、レオンの速度と貫通力が著しく低下させられ、リゼルの防御術式も、重いマナの塊に押し潰される危険性があった。
3. 古代の守護者、ゴーレムの覚醒
通路を進むレオンたちの前に、巨大な岩石が組み合わさった異形の生命体が、轟音と共に覚醒した。それは、土の核を守る古代の「巨岩ゴーレム(ギガ・ゴーレム)」だった。
ゴーレムは、その巨体から放たれる「重力震」で、通路の岩盤を崩落させながら、レオンたちに迫る。
「レオン、ゴーレムは、純粋な土のマナの塊です。貴方の炎のマナなら、一時的に岩盤を溶かせますが、すぐに冷やされて固まります。水の柔軟性も、この重いマナには通用しない!」リゼルは、解析盤でゴーレムの防御特性を調べた。
「それに、奴のコアは、極度の重力防御結界で守られています。通常の貫通では、結界にマナが食い込む前に、重力で圧縮されてしまう!」
レオンは、四属性を統合した力を試す時だと悟った。彼は、自身のマナを、炎と風の特性に変換し、ゴーレムの周囲の土のマナを『加熱と拡散』で一時的に相殺しようと試みた。しかし、その効果は限定的だった。
4. 謎の学者と、覇王装備の最後のピース
レオンがゴーレムの重力震を回避し、反撃の機会を窺っていると、通路の隅の岩陰から、一人の人影が姿を現した。ローブを纏い、古めかしい羊皮紙を抱えた、中年の学者風の男だった。
「おやおや、こんなところで派手に暴れて。この古代遺跡の貴重なマナの流れを乱さないでいただきたい」学者は、ゴーレムの戦闘を前にしても、全く慌てる様子がない。
「誰だ、貴様は!」レオンが警戒して尋ねた。
「私はただの学術探求者です。君たちの目的は、その奥にある土の核でしょう?」学者は、レオンの持つ三つの核と、彼が放つ調和されたマナをちらりと見た。「それにしても、見事な『不完全な調和』だ。覇王装備が、四つの核で完成するという言い伝えは、一つ大きな誤解をしている」
リゼルが反応した。「誤解?全ての古文書に、四つの元素の核が必要だと記されています!」
「ふむ。四つの元素は、確かに覇王装備の『エンジン』だ。しかし、それを制御する『ボディ(胴体)』が欠けている。貴方たちが持つ調和の器は、『コックピット』に過ぎない」学者は、レオンを指差した。「君たちが最後に必要なのは、核ではなく、核の力を制御する『古代の鎧』だ。それは、この迷宮の最深部で、土の核と共に眠っている」
「古代の鎧…それが、最後のピースだと?」レオンは、新たな事実に驚愕した。
「解放派は、核の力にしか興味がない。だから、彼らは最後のピースの存在を知らない。君たちがこのゴーレムを突破し、その鎧を手に入れれば、初めて覇王装備は真の姿となり、五つの属性の力を完全に制御できるようになる」
学者は、レオンに不敵な笑みを向けると、ゴーレムの唯一の弱点を示唆した。「ゴーレムの防御は、土の『静止』に頼っている。その静止を破るのは、『位相変換』した水と風の力の同時攻撃。頑張りなさい、覇王の卵よ」
そう言い残すと、学者は再び岩陰に消え、レオンたちは、最後の試練と、知られざる最終目標へと立ち向かうことになった。




