32.天空の迷宮、風の核を巡る知将戦
1. 四つ巴の危機と直行の決断
水の核を手に入れたレオンは、マナコア内部で影、炎、水の三つの極端な特性が激しく均衡を保っている状態にあった。クロードからの緊急通信が、その不安定さを更に増幅させた。
「レオンくん、リゼルちゃん、君たちのコアの状態は危険だ。しかし、解放派の動きが速い。『翠緑のストラテジスト』は、風の核の獲得に成功すれば、土の核へのルートを完全に掌握するだろう。時間がない」クロードの声には焦りがにじんでいた。
リゼルは、解析盤の警告を無視して、レオンに強く訴えた。「レオン。今は、立ち止まって調整するよりも、『速度』を優先するべきです。ストラテジストは、貴方の蒸気のマナの弱点を知っている。彼の戦略の完成を阻止するため、不安定さを抱えたまま、天空の迷宮へ直行します」
レオンは、胸元の調和の器を強く握りしめた。三つの力が軋む音を無視し、彼は決断した。「分かった。行くぞ、リゼル。四つ目の核を手に入れれば、この綱渡りも終わる!」
2. 再びの対峙とストラテジストの最終防衛線
転移術式でタワーの深部へと転送されたレオンとリゼルは、最終目標である風の核が眠る最上階の広間へと到達した。広間の中心には、緑色の光を放つ「風の核」が、巨大なマナの結界に守られて鎮座していた。
そして、その核の前に、白磁の仮面をつけた翠緑のストラテジストが、冷徹な笑みを浮かべながら立ちはだかっていた。彼の周囲には、風のマナが複雑に織り込まれた幾重もの防御壁が構築されていた。
「歓迎しよう、異端者。そして、理論家。君たちがこの不安定な状態で直行することまで、私の戦略に含まれていた」ストラテジストは静かに言った。「君の『蒸気のマナ』が持つ、炎の『熱』と水の『湿気』は、風のマナによって最も効率よく霧散させられる。それが、君の絶対的な弱点だ」
彼は、手のひら一つ動かすことなく、タワー全体の風のマナを操り、レオンたちの周囲に超高圧の風の障壁を発生させた。
「君たちが核に触れるには、私の張った風の支配を全て破る必要がある。だが、君が攻撃を放つたびに、風のマナが君のマナを拡散させ、その不安定なコアは崩壊するだろう。これは、『詰み(チェックメイト)』だ」
3. 風の核を利用した逆流の計
ストラテジストは、さらに致命的な一手を打った。彼は、自身のマナを風の核に接続させ、核が持つ『拡散』の特性を増幅させたのだ。
「私は、この風の核の力を使って、君のコア内部に侵入する。四つ目の属性が加われば、君のコアは崩壊する。核を奪う必要はない。核に触れる寸前で、君の全てを破壊する」
風の核から放たれた強烈なマナの波動が、レオンのマナコアに逆流し始めた。影、炎、水の三つの力が、風の『拡散性』によって、一気に引き延ばされ、不安定な状態へと陥る。
「くっ…マナコアが…引き裂かれる!」レオンは、激しい痛みに襲われ、膝をついた。
「レオン!耐えて!このままでは、貴方のコアが四つの属性の衝突に耐えきれず、完全に崩壊します!」リゼルは、解析盤で唯一の活路を探すが、ストラテジストの戦略は完璧だった。
4. リゼルの閃き、調和の器の最終応用
「待って…ストラテジスト!貴方は、調和の器の真の力を理解していない!」リゼルは叫んだ。
「調和の器?それは単なる『安定化装置』に過ぎない。四つの属性の奔流の前では、無力だ」ストラテジストは嘲笑した。
「いいえ!調和の器は、貴方が言う『安定』だけでなく、『共鳴の周波数の設定』ができる!レオン!」
リゼルは、最後の賭けに出た。彼女は、解析盤でレオンのマナコアの三つの特性の振動周波数を、ギリギリの安定を保てる『第四の周波数』へと強制的に設定し、それを調和の器に送り込んだ。
「調和の器――強制共鳴起動!」
レオンは、リゼルの指示に従い、崩壊寸前のマナコアに、調和の器から送り込まれる新たな周波数を強制的に受け入れた。
一瞬、彼のマナコアは完全に停止したかのように見えた。そして次の瞬間、彼の全身から噴き出した蒸気のマナは、影、炎、水、風の四つの属性を、完全に一つの「制御された力」として統合したのだ。
5. 四属性統合、覇王装備の真の起動
レオンのマナコアは、四つの属性が激しく衝突する代わりに、一つの巨大なマナの奔流を形成していた。それは、以前の蒸気のマナとは異なり、漆黒の影の中に、虹色の光が内包された、「調和された覇王のマナ」だった。
ストラテジストは、その異常なマナの奔流を見て、初めて表情を歪めた。
「馬鹿な…四つの属性が、完全に『共存』している!?安定化装置が、属性の統合まで行っただと!?」
レオンは立ち上がった。彼の右手には、もはや蒸気のマナではなく、虹色の光を放つ、完全に調和された影のマナが収束していた。
「ストラテジスト。あんたの戦略は、俺のコアを崩壊させるはずだった。だが、リゼルの理論と、この調和の器は、俺を、四つの属性を操る覇王に変えた!」
レオンは、風の核を守る幾重もの障壁に向かって、調和された影のマナを放った。
超収束貫通型――究極奥義、『四極調和』!!
漆黒の稲妻は、風の障壁が持つ拡散性を完全に打ち消し、炎の熱で水のマナを蒸発させ、水の柔軟性で風の流れを受け流し、そして影の静謐で、全ての結界を貫通した。
風の核を守る全ての障壁が、一瞬で消滅した。ストラテジストは、核を失う絶望的な状況を悟り、撤退を余儀なくされた。レオンは、四つ目の鍵、風の核を手にし、覇王装備の真の起動を達成したのだ。




