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ダンジョン・アカデミア  作者: 綾瀬蒼


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29.リゼルの新理論、蒸気のマナ覚醒

1. 二つの鍵の激突

灼熱の迷宮イグニス・ピークを脱出したレオンとリゼルは、クロードが用意した転移術式で、学院から遠く離れた海岸沿いの隠しアジトへと転送された。

レオンは、激しく消耗していたが、それ以上にマナコア内部の異常な衝突に苦しんでいた。

「くそっ…マナが引き裂かれるみたいだ」

レオンの体には、二つの極端な力が存在していた。一つは調和の器がもたらす「静謐で重い」影のマナ。もう一つは、炎の核がもたらす「活性化され軽く、熱い」炎のマナ。二つの鍵は、レオンのマナコアを舞台に、激しく反発し合っていた。

リゼルは、無言で解析盤をレオンの胸元に当て、数値を読み取っていた。

「レオン。貴方のマナコアは、氷点と沸騰点の間で揺れ動いています。この状態では、次の『水の核』があるダンジョンに入るなど論外です。水のマナが加われば、貴方のコアは間違いなく崩壊する」

クロードが通信で言った。「レオンくん、君は炎と影を適合させたが、それは野生の力。調和の器はそれを『制御』する機能しかない。『融合』させるには、君のマナの波長に合わせた調整装置が必要だ」


2. リゼルの閃き:第三の力への統合

「いいえ、クロード先輩」リゼルは解析盤から顔を上げ、氷のような瞳に初めて強い光を宿した。「調整装置は不要です。必要なのは、『理論の第三の解』です」

リゼルは、海岸の砂浜に、一本の細い線を引き始めた。「これまで、私は貴方の影のマナを『制御』することだけを考えていた。しかし、この静謐と活性の激しい衝突こそが、新たな道を開く鍵です」

彼女は、レオンのマナコアのグラフを示した。グラフは、激しい上下動を示していたが、その振動の『中心点』は、安定した第三の周波数を示していた。

「炎と水が衝突すれば、爆発か、単なる蒸発です。しかし、貴方の影のマナは『媒介メディアム』として機能している。レオン、貴方のマナは、この二つの極端な性質を、『蒸気』のように不安定で、しかし極めて高エネルギーな第三の形態へと『統合』させようとしている!」

「蒸気のマナ……?」レオンが呟く。

「ええ。貴方は、炎と水のダンジョンを突破するために、その力を『統合』させる必要がある。これは、私の父も、歴代の天才魔術師も辿り着けなかった、覇王装備の『真の調和』です」


3. 命を賭けたマナの融合実験

リゼルは、大胆な計画を立てた。「レオン。今から、貴方のコア内部で、影・炎・静謐の三つのマナを、強制的に『蒸気』の周波数へと収束させます。私の全マナを貴方のコアに流し込み、『振動周波数制御バイブレーション・コントロール』を行います。成功すれば、貴方は炎と水の力を同時に操る能力を得る。失敗すれば……マナコア崩壊です」

「リゼル、そんな危険な実験、あんた一人でやる気か!」レオンは立ち上がろうとする。

「黙りなさい。私の理論を証明するために、貴方を死なせるわけにはいきません」リゼルは、初めて感情を露わにした。

クロードが通信で介入した。「リゼルちゃん!やめるんだ!それは理論上の可能性に過ぎない!レオンくんの命が危ない!」

「可能性を現実に変えるのが、私の理論です!」リゼルは通信を切った。

リゼルは、レオンの手を握り、調和の器をレオンの胸元に押し当てた。そして、自身の全てのマナを、レオンのマナコアへと一気に流し込んだ。


4. 蒸気のマナ覚醒

リゼルが極限の『振動周波数制御』を開始した瞬間、レオンの全身から、白い霧が噴き出した。それは、炎の熱でも、氷の冷気でもない、高熱を帯びた蒸気だった。

レオンの内部では、調和の器の静謐な波動が、炎の核の奔流と影のマナの重さを一つの周波数へと集約させていく。リゼルのマナが、その周波数を見失わないように、精密な制御の針として機能した。

数分後、蒸気の噴出が収まった。リゼルは、疲弊しきってレオンに寄りかかるように倒れ込んだ。

レオンは、ゆっくりと目を開けた。彼のマナコアは、静かだが、以前よりも遥かに強力に脈打っている。彼の指先からは、熱と湿気を帯びた、半透明の白いマナが微かに漏れ出ていた。

「レオン…成功です。貴方は、『蒸気のマナ(スチーム・マナ)』を一時的に覚醒させた。これで、水の迷宮の極寒と、その環境マナの性質に『適合』できる!」

レオンは立ち上がり、掌からマナを放った。それは、炎のように熱く、しかし水のように柔軟な、第三の力だった。

「リゼル、ありがとう。あんたの理論のおかげだ」

レオンは、炎と影を統合させた、新たな力を手に、次の試練の地、「水の迷宮」へと向かう準備を整えた。

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