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ダンジョン・アカデミア  作者: 綾瀬蒼


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28/40

28.黒鉄の制御手甲(ブラック・ガントレット)、限界突破

1. 灼熱の迷宮の限界

レオンが「影炎の星穿えんえんのほしうがち」で紅蓮のゲイボルグを打ち破った後、反動で全身に極度の熱とマナの乱れが生じていた。リゼルは、辛うじて彼を崩壊した通路の安全な岩陰へと引き寄せた。

「レオン、無理です!貴方のマナコアは、周囲の炎のマナを過剰に吸収しすぎて、臨界点に達している!すぐに熱を逃がさなければ!」リゼルは焦燥を滲ませた声で叫んだ。

レオンの右手から引き剥がされた黒鉄の制御手甲は、地面で原型を留めずに溶け落ちていた。クロードの設計は完璧だったが、イグニス・ピークの極限の環境とレオンの「適合」の奔放さは、その許容限界を遥かに超えていたのだ。

「核は…核はどこだ…」レオンは朦朧としながらも、炎の核の探索を続行しようとした。

その時、ゲイボルグが地面に膝をつきながらも、憎悪に満ちた目で笑った。

「ハハハ…終わりだ、異端者!私の『炎のフレイム・マーク』は、既にこの階層全体に仕掛けられている!貴様が力の制御を失った今、全ての炎のマナが貴様の『爆弾』となる!」

ゲイボルグの言葉通り、迷宮の壁や床に仕掛けられた無数の魔術印が、赤く点滅し始めた。


2. リゼルの解析、最後の防御理論

「レオン、すぐに逃げます!」リゼルはレオンの腕を引っ張ったが、通路はゲイボルグの増援によって既に封鎖されつつあった。

「リゼル、逃げ場はない…俺がこの炎を…」レオンが再び影のマナを集中させようとするが、それは不安定な火花となって散るだけだった。

「待ちなさい!」リゼルは叫び、解析盤を広げ、周囲の炎の印とレオンのマナコアの状態を瞬時に照合した。

「ゲイボルグの術式は、貴方の影のマナの不安定化をトリガーに、連鎖的な誘爆を引き起こすように設計されている!一つでも爆発すれば、ここは火山の底だ、全てが終わる!」

リゼルは、己の「防御理論」の全てを懸ける決断をした。誘爆を防ぐには、炎のマナの『振動周波数』を外部から完全に遮断するしかない。

「レオン!貴方の調和の器を私に渡しなさい!そして、円形防御結界オーバル・シールドの内部に影のマナによる瞬間的な環境適合シャドウ・アダプトを展開し、『密閉』を!貴方と私のマナの接触を、極限まで避けなさい!」


3. 調和の器の譲渡と極限の制御

リゼルは、レオンが落とした調和の器を拾い上げ、自らの掌に握りしめた。器はレオンの影のマナと強く適合していたため、リゼルの清純なマナとは激しく反発する。彼女の全身に激しい痛みが走ったが、リゼルは顔色一つ変えなかった。

「この器の『静謐』の波動で、私の防御結界を、炎のマナの振動周波数と『非同期化デシンクロナイズ』させます!貴方と私のマナの接触を避けるのは、誘爆を誘う二つのマナの融合を防ぐためです!」

リゼルは、調和の器の力を借りて、完璧な氷の結界を展開した。その結界は、物理的な熱だけでなく、周囲の炎の印から発せられるマナの振動そのものを遮断し始めた。

レオンは、リゼルの理論を信じ、指示通りに自分の影のマナを極限まで収束・密閉させた。結界の内側で、レオンの影のマナとリゼルの氷のマナは、触れることなく存在し、その間に透明な空間が生まれた。

ゲイボルグが叫んだ。「馬鹿な!私の炎の印が、起動しない!?周波数が…遮断されているだと!?」

炎の印は赤く点滅し続けたが、爆発の引き金を引くことができない。リゼルの理論と、調和の器の力が、ダンジョン全体を巻き込む誘爆を防いだのだ。


4. 炎の核の回収と新たな脅威

リゼルが極限の制御でゲイボルグを封殺している間に、レオンは通路の奥へと進んだ。ゲイボルグの術式が破られたことで、核を守る最後の障壁は既に消滅していた。

レオンは、炎のように赤く脈打つ「炎のフレイム・コア」を手に取った。その瞬間、彼のマナコアは再び、調和の器の「静謐」とは異なる、「活性」の奔流に襲われる。しかし、今回はリゼルの結界で守られていたため、すぐに暴走することはなかった。

「レオン!急いで戻って!もう結界の維持は限界です!」リゼルは叫んだ。

レオンが炎の核を持って戻ると、リゼルは最後の力を振り絞り、結界を解除。二人は、ゲイボルグの追撃を振り切り、崩れた通路を縫って脱出を開始した。

「覚えていろ、ヴァイスベルク!貴様の完璧な理論も、影の異端者も、我々の炎からは逃れられない!」ゲイボルグの怒号が、崩壊し始めた迷宮に響き渡った。

レオンは炎の核と調和の器という相反する二つの鍵を手に、灼熱の迷宮を後にした。彼のマナコア内部では、「静謐」と「活性」の激しい衝突が始まっており、次の「水の核」を探す前に、この不安定さを解決しなければ、破滅は必至だった。

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