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ダンジョン・アカデミア  作者: 綾瀬蒼


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25/40

25.故郷の落日、そして漆黒の希望

1. 惨状の故郷

魔女の炉を脱出し、不眠不休で駆け抜けたレオン、リゼル、そしてクロードの三人が辿り着いたのは、かつての平穏が嘘のように変わり果てたレオンの故郷だった。

村を囲んでいた守護結界は無残に引き裂かれ、空は魔女の炉から逆流した影のマナによってどす黒く濁っている。村の家々は半壊し、逃げ遅れた村人たちが、ダンジョンから溢れ出した影の変異体シャドウ・ミュータントに包囲されていた。

「レオン!あれを見て!」リゼルが指差した先には、村の広場で巨大な影の魔物と対峙し、今にも力尽きようとしている村の自警団と、傷ついた長老の姿があった。

「間に合った……!」レオンの目に、激しい怒りと決意の炎が宿る。

2. 調和の器、真の解放

「レオン、無理は禁物です。魔女の炉での疲労が残っています!」リゼルが警告するが、レオンは止まらない。

「リゼル、クロード先輩。ここは俺の家だ。俺が守らなきゃ、誰が守るんだ!」

レオンは懐から調和の器を取り出し、自らのマナコアに強く念じた。器が呼応し、透き通るような白銀の光を放つ。その光はレオンを包み込み、体内の影のマナと完璧に混ざり合った。

「分析開始……マナの安定指数、測定不能。いえ、これは『安定』ではなく『昇華』です!」リゼルは解析盤を見つめ、震える声で叫んだ。「レオン!今なら影のマナを完全に御せます。全出力を……放ちなさい!」

3. 超収束貫通型ハイパー・フォーカス・ペネトレーター星穿ほしうがち

レオンは村の中央に陣取る、山のような巨体を持つ変異魔物――影の暴君シャドウ・タイラントに向かって突き進んだ。

魔物が放つ影の衝撃波を、レオンは影のマナによる瞬間的な環境適合シャドウ・アダプトで流れるように回避し、最短距離で懐に潜り込む。

「これでお別れだ、化け物!」

レオンの右手に、調和された影のマナが凝縮される。それはもはや黒い霧ではなく、星の輝きを閉じ込めたような、極限の一点へと収束していった。

超収束貫通型ハイパー・フォーカス・ペネトレーター――!!」

放たれたのは、細く、しかしこの世の何よりも鋭い一筋の閃光。

その光は影の暴君の強固な外殻を無視し、内部の核を貫き、さらにその背後にそびえるダンジョンの入り口までもを一直線に撃ち抜いた。

シュン――ッ!!

音さえ置き去りにする貫通。

一瞬の静寂の後、巨大な魔物は絶叫を上げる暇もなく、内側から白銀の光に焼かれて消滅した。さらに、レオンの放った一撃はダンジョンの入り口を封印していた影のマナの源流を「調和」させ、逆流を強制的に停止させた。

4. 英雄の帰還

影のマナが霧散し、村に数週間ぶりに本物の陽光が差し込む。

呆然としていた村人たちが、一人、また一人と立ち上がり、漆黒の衣を纏った少年の姿を視界に捉えた。

「レオン……レオンなのか!?」長老の声が震える。

レオンは荒い息をつきながら、調和の器をそっと懐にしまった。彼の腕を、駆け寄ったリゼルと、満足げに笑うクロードが支える。

「完璧だったよ、レオンくん」クロードが耳元で囁く。

「……私の理論の、最高の証明でした」リゼルは少し顔を赤らめ、視線を逸らしながら告げた。

レオンは、自分を囲む村人たちの安堵した顔を見て、ようやく小さく微笑んだ。

「ただいま。みんな、もう大丈夫だ」

学院から追放されかけ、異端と蔑まれた少年は、二人の天才と共に世界の深淵を覗き、そして「覇王」ではなく、故郷を救う「英雄」として戻ってきたのだ。

しかし、レオンは知っていた。調和の器を手に入れた彼を、学院の派閥や、さらに深い闇が放っておくはずがないことを。彼の戦いは、この村を守ったことで、本当の意味で始まったばかりなのだ。

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