24.調和の光と影の共鳴、故郷への帰還
1. 究極の貫通力
解放派の上級魔術師たちに包囲されながらも、レオンは恐れなかった。彼の手に握られた調和の器から放たれる静謐なマナが、体内の影のマナと共鳴し、かつてない安定感をもたらしていた。
「リゼル。あんたの理論と、クロード先輩の流動、そしてこの器の力。全部使って、一気に終わらせる!」
「いいでしょう!レオン!彼らは貴方の貫通力を恐れている。防御を固める前に、全ての魔力経路を貫通してください!」リゼルは、最後の力を振り絞り、解析盤で敵の連携の脆弱な点をレオンに指示した。
解放派のリーダーは、レオンの指先から放たれる、静かに収束された漆黒の光を見て、警戒を強めた。
「囲め!総員、対貫通防御結界を展開せよ!」
五人の魔術師が瞬時に防御術式を重ね合わせるが、彼らの防御は、レオンの超収束貫通型の完成形の前には、無意味だった。
ズシャアッ!
レオンが放った漆黒の稲妻は、魔術師たちが幾重にも張り巡らせた防御結界を、抵抗なく滑らかに貫通した。それは破壊ではなく、「無効化」だった。調和の器によって極限まで純粋化された影のマナは、防御術式を構成する不純なマナの波動を無視し、魔術師たちのマナコアのわずか数センチ手前で霧散した。
魔術師たちは、防御魔法が破られた衝撃と恐怖で、動くことができない。彼らのマナコアは、レオンの力に触れることなく、「貫通される恐怖」によって機能停止に陥った。
「ば、馬鹿な……我々の結界が、一瞬で……!」リーダーの顔から血の気が引いた。
2. クロードの最後の介入
レオンが追撃しようとしたその時、炉心の入り口から、再び異臭を放つ煙幕と、雷鳴のような轟音が響いた。
ドゴオォォン!
岩盤が崩壊する音と共に、クロードの声が響いた。「さあ、レオンくん!リゼルちゃん!いつまで遊んでいるんだ!帰りのチケットは今だぞ!」
クロードは、魔女の炉の入り口に、大規模な「炉心崩壊誘発術式」を仕掛けていたのだ。これにより、ダンジョン自体が不安定になり、解放派の追撃は完全に遮断される。
「クロード先輩、貴方……ダンジョンを崩壊させる気ですか!」リゼルが驚愕した。
「ふむ、リゼルちゃん。理論は常に、『最速の効率』を求めるべきだろう?このダンジョンを崩壊させれば、解放派は数週間はここに入れない。そして、影のマナの噴出も一時的に抑えられる。完璧な解決策だ!」クロードは、煙幕の中で二人に駆け寄った。
解放派のリーダーが怒鳴った。「逃がすな!待て!クロード!貴様まで裏切るか!」
「いや、私は最初から、学院の秩序よりも面白い実験を選んでいるよ」クロードは、レオンの肩を叩いた。「レオンくん、君の故郷の危機が、君を救った。この焦燥を忘れるな」
3. 故郷への帰還
レオンは、調和の器を握りしめ、リゼルとクロードと共に、崩壊する炉心から脱出を始めた。クロードが用意した脱出ルートは、彼らが来た時とは違う、魔女の炉の最古の排出口へと繋がっていた。
脱出ルートの途中、リゼルはレオンに最後の指示を与えた。
「レオン。調和の器は、貴方の影のマナを安定させましたが、完全に『制御』できたわけではありません。貴方の力は、依然として規格外です。この力で、貴方の故郷を救うのです」
「ああ、分かってる。この力は、俺の故郷のためにある」
クロードがレオンの背中を押した。「さあ、走れ!君の故郷は、この世で最も君の力が必要な場所だ!」
レオンは、リゼルとクロードと共に、崩れゆく魔女の炉を脱出し、一路、故郷の村へと向かう道を選んだ。
王都の権力争いを離れ、故郷のダンジョンで、レオンの調和された覇王の力が試される、真の戦いが始まろうとしていた。彼の帰還は、故郷にとって最後の希望となるはずだった。




