22.炉心の番人と、影を貫く超収束
1. 炉心への到達
幻影の回廊を抜けた先、通路は一気に広がり、二人は巨大な空洞へとたどり着いた。ここが、魔女の炉の最深部、炉心だった。
空洞の中央には、赤黒く渦巻く影のマナが煮えたぎっており、まるで小さなブラックホールのようだ。その中心からは、凄まじい熱と、圧倒的なマナの圧力が放出されていた。
「ここです、レオン。影のマナの源流……。そして、あの渦の中心に、古文書の言う『静謐な場所』があります」リゼルは解析盤を握りしめ、その先に広がる結界を指さした。
渦巻く影のマナの奔流の中、一点だけ、透明で安定した球状の結界が存在していた。その内部に、微かに光を放つ小さな金属の器が浮遊しているのが見えた。あれが調和の器だ。
その調和の器を守るように、渦の縁に鎮座していたのが、炉心の番人だった。
2. 影のマナの究極の集合体
番人は、明確な形を持たない。それは、周囲の影のマナを凝縮し、巨大な漆黒の騎士の形を成していた。鎧の隙間からは影のマナが炎のように噴き出し、その手に持つ大剣は、空間のマナを歪ませるほどの質量を感じさせた。
「分析不能……。これまでの変異魔物とはレベルが違います。純粋な影のマナの集合体。これは、この炉のマナそのものが具現化した存在です!」リゼルが声を張り上げた。
番人は、レオンたちに気づくと、ゆっくりと動き出した。その一歩ごとに、足元の影のマナの渦が巨大化していく。
「レオン!私の防御結界だけでは持ちません!影のマナによる瞬間的な環境適合で結界を支えて!私は、番人のマナの奔流を解析し、一点の弱点を見つけます!」
3. 全力連携と、防げない浸食
戦闘が始まった。番人は大剣を振り上げた。その一撃は、物理的な衝撃だけでなく、影のマナによる空間の切断を伴っていた。
リゼルは、全マナを込めて円形防御結界を展開。レオンは、結界の外側で影の適合を維持し、影の衝撃波を吸収し続けた。
ゴオォン!!
一撃が結界に命中するたび、二人の全身に激しい振動が走る。
「くっ……!耐えきれません!影の浸食が結界の内部にまで及んでいる!レオン、貴方の影の適合でも、これほどの純粋な影の力は止められない!」リゼルが苦痛の表情を浮かべた。
番人の目的は、結界を破壊し、調和の器に近づく者を排除することだ。
(ダメだ、このままじゃ結界が壊れる!俺の故郷が!)
レオンの胸中に、故郷の村が崩壊する幻影が去来した。焦燥が、彼の影のマナを沸騰させる。
4. 影を穿つ一撃
「リゼル!弱点はまだか!?」レオンが叫んだ。
「待って!番人のマナの奔流に、わずかな『不連続点』を検出!番人の核は、その胸部に凝縮されていますが、そこを覆うマナの流れが一瞬だけ逆流する!」
「一瞬でいい!そこを教えてくれ!」
リゼルは、解析盤をレオンの視線に合わせ、番人の胸部を指し示した。「今!三秒後!その一点に、貴方の超収束貫通型の全てを叩き込め!」
レオンは、リゼルの防御結界から、自らの影のマナを全て引き抜いた。防御を捨て、攻撃に全てを集中する。周囲の影のマナが、レオンの奔流に共鳴し、彼の指先に、漆黒の光が異常なまでに集束していく。
「超収束貫通型!!」
影のマナの奔流を突き破り、漆黒の稲妻が番人の胸部の不連続点へと向かって放たれた。
番人は、自らの核を貫かれまいと、大剣を防御に回すが、超収束貫通型は、その全てを貫通した。
ズオォォォン!!
漆黒の稲妻が番人の核を貫いた瞬間、番人の全身を構成していた影のマナが、大剣もろとも霧散した。炉心の赤黒い渦は、一瞬で収まり、その場には、レオンの荒い息遣いと、静寂だけが残された。
番人は消滅した。影のマナの奔流は止まり、炉心は静謐を取り戻した。
「成功です……!レオン!貴方は、影のマナの究極の集合体を、打ち破った!」リゼルは、全身の力を使い果たして崩れ落ちながらも、歓喜の声を上げた。
そして、影のマナの渦が消えた中央には、調和の器が、無防備な状態で光を放って浮遊していた。




