15.漆黒の穿孔と、解放派の追撃
1. 衝突:解放派の魔術師
極秘書庫の入り口に現れたのは、ローブに解放派の紋章を刻んだ三人の上級魔術師だった。彼らは学院の秩序と安全を司る「警備隊」ではなく、明らかに派閥の私兵だ。
「貴様ら、王立図書館の重要機密を盗み出すとは、もはや許されない罪だ!特に、そこの異端のマナコアを持つ少年!」
リーダー格の魔術師が、レオンを指さした。
「リゼル嬢!我々は貴女を害するつもりはない。その古文書を置いて、我々の監視下に入れ。そして、その少年を我々に引き渡せ!」
リゼルは古文書を抱き締め、冷たく言い放った。「黙りなさい。貴方たちの目的は、父の理論を破壊した『影のマナ』を、世界に野放しにすることだ。レオンは、貴方たちの実験道具ではない」
「そうか。ならば、力尽くで引き渡してもらう!」
魔術師の一人が、素早く呪文を唱え、書庫の通路に巨大な炎の壁を生成した。
「フレイム・ウォール!」
2. リゼルの指示とアルベルトの動揺
「アルベルト!防御結界を展開!」リゼルが叫ぶ。
アルベルトは恐怖に震えながらも、命令に従った。「グランド・シールド!」彼は、分厚い岩盤の防御壁を構築した。
「レオン!貴方の超収束貫通型のターゲットは、正面の三人ではない。彼らのマナの連携を支えている、書庫の『支柱』を狙え!」リゼルは冷静に指示を飛ばした。
「支柱?」
「その通路の支柱には、古くからダンジョンマナを抑え込むための『安定化の術式』が刻まれている。それを破壊すれば、書庫内のマナが乱れ、彼らの連携は崩壊する!無闇に人間を殺傷しては、貴方が不利になる!」
レオンは、リゼルの指示の意図を理解した。彼は力を制御しなければならない。殺傷ではなく、構造の破壊。
「くそっ、俺がこんな卑怯な真似を!」アルベルトが怒鳴った。「なぜ直接、敵を討たない!」
「黙れ、アルベルト!」リゼルがアルベルトを睨みつけた。「レオンの力は貫通特化。広範囲の魔術師を相手にするには不向きだ。最速で無力化する!」
3. 漆黒の穿孔とマナの乱れ
レオンは、集中した。リゼルの理論と、クロードの指導で身につけた流動。
超収束貫通型!
レオンの指先から、漆黒の稲妻が放たれた。それは、アルベルトのグランド・シールドの側面をかすめ、炎の壁を突き破り、魔術師たちの真横に立つ石の支柱へと吸い込まれた。
ドゴォン!という音は小さかったが、支柱が内部から砕け散るような、異様な振動が走った。支柱に刻まれていた安定化の術式が破綻したことで、書庫内のマナが一瞬で暴発寸前の状態へと乱れた。
「しまった!マナの経路が乱れたぞ!」
「制御不能だ!術式が維持できない!」
解放派の魔術師たちは、マナの暴れっぷりに驚愕し、防御と体勢の立て直しに追われた。
その隙を見逃さないリゼル。「今です、レオン!脱出ルートを確保!」
4. アルベルトの裏切りと協力
レオンは、リゼルの指示通り、廊下の突き当たりにある、強固なマナの障壁に指を向けた。
再び、超収束貫通型。障壁は、まるで厚紙のように貫通され、脱出可能な穴が開いた。
「行くぞ!」リゼルがレオンの手を掴み、走り出そうとした、その時。
アルベルトが、突如として彼らの前に立ち塞がった。
「待て!リゼル様、古文書は置いていけ!それを渡せば、派閥は貴女の罪を不問にする!」アルベルトは、震えながらも、自分の派閥への忠誠と、リゼルへの執着の間で揺れていた。
「アルベルト、貴方の愚かな派閥のために、私の父の仇を討つ手段を奪う気か!」リゼルが憤激する。
レオンは、躊躇なく、アルベルトの足元に向けて、低威力の超収束貫通型を放った。
パシュッ!
アルベルトの足元、正確に1ミリの穴が開いた。恐怖でアルベルトは膝から崩れ落ちた。
「邪魔だ!」レオンはアルベルトを突き飛ばし、リゼルと共に、開けた穴へと飛び込んだ。
解放派の魔術師たちが追撃しようとするが、書庫内のマナの乱れが激しく、広範囲の魔法は使えない。
「待て!逃がすな!」
彼らは追撃を試みるが、レオンとリゼルは、図書館の裏口から暗闇の学院敷地へと飛び出した。
「追手を巻くぞ、レオン!まだミッションは終わっていません!」
リゼルは、古文書の情報を手に入れたものの、学院の闇の派閥に目をつけられ、さらにアルベルトという不安定な要因を抱えることになった。レオンの故郷を救う道は、さらに複雑で危険なものへと変貌していた。




