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ダンジョン・アカデミア  作者: 綾瀬蒼


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01.学院の門を叩く者

1. 学院都市アークライト

王都の北に位置する学院都市アークライトは、巨大な結晶が輝く尖塔が立ち並び、常に空気中に微細なマナの光の粒子が漂う幻想的な場所だった。大地から湧き上がるようにマナが満ちているため、街路樹さえもかすかに淡い光を放っている。

「すげぇ……これが、王立アークライト魔法学院か」

主人公のレオンは、埃っぽい麻の服の上から、肩にかけた使い古しの革袋をぎゅっと握りしめた。彼は辺境の寒村出身で、都市の眩いばかりの光景と、行き交う人々の身に纏う上等なローブや、軽やかに魔法を使う姿に、わずかな劣等感と、それを上回る強い憧れを抱いていた。

今日は、そのアークライト魔法学院の入学試験日。門前は、自信に満ちた表情の貴族の子息や、各地の魔法使いの徒弟と思しき者たちでごった返していた。誰もが、学院で力をつけ、いつかはダンジョンに潜り、一攫千金と名誉、そして伝説の覇王装備を手に入れることを夢見ている。

2. 控え室の対比

レオンは、受験者控え室の隅で、持参した簡素な魔導書グリモワールをめくりながら、最終確認をしていた。彼の使える魔法は、故郷の村で独学で覚えた基本的なものばかりだ。

> 「ライト・ボルト(初級雷撃)」

> 「マナ・シールド(基礎防御)」

> 「フレイム・エッジ(剣への炎付与)」

>

全て基礎中の基礎。特に防御魔法である「マナ・シールド」は、マナの精密な制御が必要であり、レオンにとって最も苦手な分野だった。

彼の故郷は、最近出現した新たな小規模ダンジョンからの魔物溢れ(スタンピード)により、危機に瀕していた。

「俺は、必ず学院に入り、力をつける。そして、覇王装備を見つけて、村を守る。……そのためには、この試験を絶対に突破しないと」

緊張で手に汗が滲む。

その時、控え室の騒めきが一段と大きくなった。

「見ろよ、あそこ!あの子が、あの『白銀の魔女』の、リゼル様だぞ!」

レオンが顔を上げると、一際目を引く一団が入ってきた。中心にいたのは、見事な銀色の長髪を持ち、氷のように冷たい美貌の少女、リゼル・ヴァイスベルク。彼女の纏う上質なローブからは、レオンの何倍もの濃密なマナが、無意識に放出されているのが感じ取れた。それはまるで、彼女の周囲だけ空気の密度が違うかのように感じられた。

リゼルは控え室の受験者たちを一瞥する。その視線は、レオンのような田舎出の少年にはまるで興味を示さず、一瞬で通り過ぎていった。彼女の視界に映るのは、合格という確実な未来だけだ、と言わんばかりの冷徹な眼差しだった。

(あんな天才と同じ舞台に立たなきゃならないのか……。あのマナの量、まるで別世界の生き物だ)

レオンは再び魔導書に目を落とす。

(だが、関係ない。俺には、俺の戦い方がある。精密な制御は苦手でも、俺の『あの』一点突破の魔力だけは、誰にも負けない)

3. 試験開始の宣告

やがて、学院の教授らしき人物が壇上に上がった。彼は見るからに強力な魔術師で、身につけたローブの裾が、彼が歩くたびに微かな風を巻き起こす。

「静粛に!」

その声一つで、ざわついていた控え室全体が、一瞬で静まり返った。

「これより、王立アークライト魔法学院、入学試験を開始する!」

教授は、手に持った水晶の杖を軽く床に打ち付けた。

「試験は二部構成。第一部、基礎マナ理論筆記。そして第二部が、お前たちの将来を決める実技試験だ」

教授は、冷たい笑みを浮かべた。

「実技試験の内容は、シンプルだ。全員が、学院敷地内に特別に用意された『模擬ダンジョン』に潜入してもらう。与えられた時間内に、最も効率的かつ安全に目標物を持ち帰った者が合格となる」

模擬ダンジョン。それは、マナを操作して作られた、本物のダンジョンに限りなく近い環境だ。レオンの目は強く輝いた。

(模擬ダンジョンか……筆記はともかく、実戦なら!)

「さあ、まずは筆記試験の会場へ向かえ。未来の魔術師諸君!」


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