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【連載版】実家住みおじさん、私道のど真ん中に湧いた邪魔なダンジョンと配信者どもをヘッドショットでぶっ潰す  作者: CarasOhmi
【番外編2】実家住みおじさんの甥、幼馴染ギャルとダンジョンに潜り、こじれたケモノ性癖の矯正を目指す
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#最終話 終わりなき人の業《カルマ》

 それから、僕らはダイニングテーブルで向かい合い、お付き合いをしている報告と、ダンジョンの一件についての話をしました。母さんは怒っているわけではありませんが、朗らかな表情というわけでもありません。話の内容的に、それは仕方ないことでもあります。


「……私の『願い』の件、既に伺ってますか?」

「うん……あなたのお母さんも『もっと話を聞けばよかった』って後悔してたから……今後はちゃんと、悩んだことは身近な大人に相談なさいね。全部は解決できなくても、思いつめて暴走したら、きっとあなたの周囲も悲しむわ」

「……はい」

「あなたの人生はあなたのものだけど、あなたの人生を彩るのは周りの人間でもあるの。誤った道に進んで周囲が不幸になることは、得てしてあなたも不幸になることに繋がる。だから、強迫観念に襲われたら、まずは深呼吸して、頼れる人に相談なさい」

「…………」


 ユウカちゃんは俯き気味でその話を聞いていました。母さんも、決してユウカちゃんが憎いわけではなく、むしろ昔から見知った子が、思いつめて起こした行動を、もう繰り返させたくないという想いが強いのでしょう。

 僕も、僕とユウカちゃんのことで、母さんを傷つけることは、本意ではありません。


「……ユウカちゃん。これから悩んだら、僕もしっかり聞くし、一緒に大人の意見も聞きにいこうね。大丈夫、信頼できる人はたくさんいるから」

「……うん」


 彼女は、僕の言葉を受けて、少し顔を上げました。少なからず心の荷は下りたようです。僕の方も、近いうちにユウカちゃんのおばさんに、謝罪とあいさつに伺おうと考えました。


「……まあ、若いうちは想い余って暴走するのはありがちだけど……それで人生が狂ってしまう選択もあるわけでね」


 そういって母さんは、リビングのドアを確認しました。なんだろうと不思議に思っていましたが、改めて僕ら二人に向き合い、言葉をつづけました。







「……避妊はしなさい」


 僕は、母の口から出た言葉に、思わずむせてしまいました。

 僕は慌てて母さんの方に前のめりになります。


「なっ……ちょっと……」

「……下ネタでも、下世話な猥談でも無いわ。これは真面目な話よ」


 母さんは睨むような視線を僕に送りました。


「チアキが帰ってきた時に、アンタとユウカちゃんが家にいたってことは……昼頃、私のいない内にユウカちゃんを家に上げたんでしょう?チアキも『部屋にいた』って言ってたし。タイミング的に考えれば、実際に『それ』はなかったと思うけど……それでも十分懸念はある話だわ」

「…………」


 僕は沈黙しました。

 母さんの指摘は至極もっともであり、僕の行動をほぼ言い当てていたためです。


「……親としては、当然の話として『やるな』と言っておくけれど。それでも、年頃の男女が、大人のいない空間で言いつけを守って『何もしない』と思うほど、楽天的には見て無いの。残念ながら、あなた達には『前科』も出来てしまったわけだし」


 僕とユウカちゃんは、言葉をなくし、母さんの話をじっと聞いていました。

 ぐうの音も出ないとは、こういう事を言うのでしょう……。


「だから、私からは一言だけ。『高校生として責任を取れる範囲で、実直なお付き合いをしなさい』。そのラインは、あなたたち二人でしっかり考えなさい」

「…………」


 僕ら二人は、顔を真っ赤にしながら母の言葉に頷きました。


「……親として、子供に不幸になんてなって欲しい訳はないんだから。今回を教訓に、一時の感情で『最悪』の結果にならないように、これからも気をつけなさい」

「……はい」


 ……母の言葉は正論としか言えません。

 これからは、焦らず、実直な交際をしていこうと思います……。



* * *



 すっかり日も陰り、僕はユウカちゃんを彼女の家まで送って行くことにしました。


 ウチでご飯を食べて行かないかという話も出たのですが、あれから話し込んでしまい連絡をするタイミングが無く、彼女の家でもご飯の準備をしているだろうということで、そうした流れになりました。

 チアキが少し残念そうにしていましたが、ユウカちゃんが妹にエンドレスで絡まれ続けたり、性の話題の後で母と一緒に夕食を取る気まずさを考えると、今回はパスするのは適切かもしれません。



 ………………



 ……正直、僕の自制心も、大分危なかったので、母さんに注意を受けたことは、戒めになったなと感じます。

 僕も無責任に彼女を不幸にしたいわけではありません。


 ……その、一応「備え」はしていたのですが……それでも、ことを焦った末に、彼女や、彼女に関わる身近な人の人生を壊してしまっては本末転倒です。

 年相応のお付き合い……その仕方は、これからもしっかり考えていかなくては、です。


「ハル君」

「はい」

「……ごめんね、私、また暴走してて」

「あ、いや……それは僕もだから……お互い、状況に流されないように、気をつけなきゃだね……」

「うん……そうだね……」

「あ、その……僕も、無責任でいいって考えてたわけじゃなくて、その、薬局で、その……」

「…………」


 彼女は、顔を赤くしてそっぽを向いてしまいました。

 ……あれ、これってハラスメントになるんだろうか。

 しまった。やらかしたかも……。


「……うん、その、わかってる。わかってるよ、ハル君」

「うん、ありがとう……?」


 ……何のお礼を言ってるんだろう、僕は。




 ――ともあれ、もうじき夏休み。

 僕らは学校で会う時間は減りますが、反面で時間が確保しやすくなり、プライベートで会う機会は増えていくと思います。それこそ、デートなどをするならば、身近な大人の目の届かない所で。

 そうなれば、僕たちは互いに、お互いのことを考えた歩み寄りが求められていきます。身体の成熟した僕らにとって、それはただ浮かれた気持ちだけで臨むべきことではありません。


 僕に優しくしてくれたユウカちゃんと、これからは、真面目に、末永く、支え合って付き合っていきたい、というのは僕の本心です。そのために、僕は僕の欲と折り合いをつけて生きていく必要があります。


 これからも、彼女を、ユウカちゃんを、大切に――




「……そろそろ、うち着くね」

「うん、今日はチアキに絡まれたり、母さんからも重い話が多かったし……ゆっくり休んでね」

「ううん、チアキちゃんからは『カッコいい!』なんて褒められちゃったし、悪い気分じゃなかったよ」

「なら、良かった……」

「えへへ……部活は同好会みたいな規模だから、買い被りなんだけどね……」


「ただ……」

「?」


 彼女が、一歩、僕に距離を詰めました。

 その瞳は、オレンジ色の夕日が反射し、星屑のようなきらめきを放ってます。

 彼女の顔が赤く見えるのは、夕焼けのせいか、それとも――


 ――それは、野暮な問いでしょう。


 僕も、彼女に一歩、歩み寄りました。

 僕とユウカちゃんの身長はほとんど同じ、僕の視界の真正面には、僕をまっすぐ見つめる彼女の顔があります。


 やがて、彼女は目を瞑り――


 ―――――――――


 ―――――







「じゃあ、また明日ね。ハル君」

「うん、また明日ね、ユウカちゃん」


 僕らは、彼女の家の前で軽く手を振り、別れました。


 僕は、未知の感触を反芻する様に、自分の口元を抑えました。

 ……その心は、浮かれ切っていて、家族の前で取り繕えるのか、今からもう心配ではあります。


 やがて、赤い夕陽は住宅街の三角屋根に飲み込まれ、空は徐々に彩度の低い青に染まっていきました。


 人間は「業」からは逃れられません。それとどう付き合って、よりよい未来を選び取って行けるか。それが人生なのでしょう。

 だから、僕は、これからもその「欲」に向き合い、時に抗い、時に受け入れ、人生を歩んでいこうと思います。大切な彼女と、幸せな未来を掴むために。


 僕は、遠ざかっていく「扇さんの家」を少しばかり振り返り、家族が帰りを待つ自宅へ帰って行くのでした。





 ――――【了】――――


















 家族の寝静まった深夜。


 僕は、ベッドに寝ころび、スマートフォンを眺めていました。

 このスマートフォンには、あの日からユウカちゃんと取った写真が多数入っています。


 ……けれど、


 人間の欲とは、抗いきれないものでもあります。




 このスマートフォンには、残っているのです。

 僕が、全身全霊で拒絶した「キャシィの写真」が。


 それは、カズヒロおじさんの妻、レイチェルさん――――








 ――――では、ありません。

 彼女の写真は、ユウカちゃんと最深部に潜ったあの日、家に帰ってすぐに削除しました。




 スマホに保存された画像。

 それは、ユウカちゃんが送ってきたもの。

 彼女のちょっとした、いたずら心から撮られた、一枚の自撮り写真。


 完全擬態魔法パーフェク・トイリュージョンで変身したユウカちゃんの「キャシィの姿」――

「好きな人の、好みの姿になりたくて」とメッセージを添えて送られた画像――



 僕の性癖が「直った」かというと、それは正しい表現ではありません。

 僕の性癖は、レイチェルさんの時以上のインパクトある経験に「上書き」されたに過ぎないのです。


 そう、「内気系幼馴染ネコケモ眼鏡ギャル」という、属性が極限まで盛られたユウカちゃんの出で立ちに、僕の脳味噌は、最も深い所まで黒焦げにされていたのでした。


 ……人間の姿をしたユウカちゃんももちろん好きです。大好きです。

 けど、僕の性癖は、大好きな人によって、またしても焼かれてしまいました。


 きっと、僕は、内面も、容姿容貌も、ユウカちゃん以上の恋人と巡り合うことはないでしょう。


 そういうわけで、僕の心は今なお、ユウカちゃんという名の魔性の迷宮(ダンジョン)の中で、惑わされ続けているのでした。

 今なお、性癖の迷宮をさまよう僕の業の物語は、もはや脱出不能ということで、これにて幕を引かせていただきます。


 それでは皆様、機会があったら……またどこかのダンジョンでお会いしましょう。




 ――――【今度こそ、了】――――










最後まで読んで頂きありがとうございます!

甥っ子たちの物語は、ここで一区切り。

本作を楽しんでいただけた方は、下にスクロールして☆を入れて頂けますと幸いです。


☆:いま一歩

☆☆:最後まで読んだ

☆☆☆:悪くない

☆☆☆☆:良い

☆☆☆☆☆:最高!

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