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【連載版】実家住みおじさん、私道のど真ん中に湧いた邪魔なダンジョンと配信者どもをヘッドショットでぶっ潰す  作者: CarasOhmi
【番外編2】実家住みおじさんの甥、幼馴染ギャルとダンジョンに潜り、こじれたケモノ性癖の矯正を目指す
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#35 テンパりルームツアー

「ハル君、明日の予定なんだけど……」

「えっ……ああ、確か学期末だし短縮授業だったよね」


 昼頃の教室の喧騒の中、今日の授業を終えた僕は帰り支度を、ユウカちゃんは部活動に行く準備をしながら、二人で話していました。


「うん、それでね……」


 ユウカちゃんは、小声で僕に耳打ちをしました。


「その日、ハル君のお家に伺っていいかなって……」




 ………………




 ……脳内を、凄まじい勢いで、不純な妄想が走り過ぎました。

 いやいや、ユウカちゃんに限って、そんな、そんなことは……


「その、カナコさん夫婦やカズヒロさんには、あの時のお礼と、ご迷惑をかけた謝罪もしたけど、ハル君のご家族には何も話してなかったから……あんまり、教室で話す話でもないしね……」

「あっ、そういう……」

「……?」

「ううん、なんでもない」


 白昼堂々とんでもない話をされたのかと思って焦りましたが、確かに、僕とユウカちゃんは別に付き合っていることを公言しているわけでも無いので、このあたりを知っているのは、小畑さんと田辺さんぐらいのものです。

 あらぬ誤解を招くという意味でも、家に行くというのを大声で話すわけにも行かないというか、その「あらぬ誤解」を僕がしてしまったわけで……ああ、恥ずかしい。


「……でも、あの時の話については、山神ダンジョンスイーパーズとの雇用関係として完結してるし、ユウカちゃんの願いについても、カナコおばさん達から厳重注意を受けたわけだし、ことのあらましはユウカちゃんのおじさんとおばさんにも、簡潔に伝えたそうだから、一通りは解決したって扱いでいいんじゃないかな……」

「…………」

「一応、母さんもカズヒロおじさんから経緯は聞いてるはずだし、ユウカちゃんに怒ってるってことはないと思うよ」


 僕の話を受けて、ユウカちゃんはしばらく黙っていましたが、言葉をつづけました。


「……ハル君を最後の探索に連れて行くようにって提案してくれたのは、ハル君のおばさんだし、やっぱりこういうけじめは、しっかりつけなきゃだめだと思うの」

「そ、そうかなぁ……」

「……その、これからのことも考えて、ね?」

「……?」


 僕はその言葉の意味するところが分からず、頭の上に疑問符を浮かべているような感覚でいましたが……


「その、お付き合いしてるんだから……ご家族とは、『おかあさん』とは、ちゃんと信頼関係を作って行かなきゃかなって……」

「………………」




 ……あっ。


 あぁ……、なるほど……。

 まだ子供の気分でいた僕は、「そこまで」考えていませんでした。

 つまり、ユウカちゃんは「家族同士の信頼」を要する関係になるまで、僕と、真面目に付き合ってくれる気で……あっ、まずい、顔が赤くなってく……。


 僕は慌てて口元を覆いました。

 対するユウカちゃんは、微かに頬を染めてこそいますが、落ち着いています。


 ……彼女の「お付き合い」の前提が「それ」だったと考えると、僕の恋愛観は、目先のことばかりで、少し軽薄であったかもしれません。反省しないと……。

 ……いや、驚いただけで、僕も「そうなれればいいなぁ」とはふんわりと考えていましたが、それでも、そのあたりの認識はユウカちゃんの方が、先を見越した明確なビジョンを持っていたようです。


「うん、そうだね。改めて母さんに、ユウカちゃんを紹介するよ」

「……うん、じゃあ明日は部活もないから、一緒に帰ろうね」


 そういって、彼女は手をひらひらと振って、教室を後にしました。

 彼女を見送ったのち、僕も荷物を持ち上げ、帰路に就くことにしました。


 なんだかんだ、僕もまだまだガキってことです。ユウカちゃんに釣り合うように、もっとしっかり将来を見越して過ごさないとなぁ……。



* * *



 翌日の放課後、成績処理による短縮日程を終え、僕らは学食で早めの昼食を食べて、一緒に電車に乗って、家に向かいました。

 同じ町内、ごく近所に住んでいるとはいえ、彼女が僕の家に上がるのは久しぶりです。


 ……まあ、それはそうでしょう。いくら幼馴染とは言っても、成長した男の子と女の子が家で遊ぶことは少ないでしょう。というか、小学生だって男子の家に女子が上がることは少ないです。せいぜい、誕生会ぐらいのものかと。

 そんなわけで、大分緊張していたのですが、そんな緊張を崩すように、僕のスマホに着信が入りました。母からのチャットが入っていたようです。


「ごめん、家のルーターの調子が悪くて仕事できなくなっていて、夕方まで駅前のコワーキングスペースに出ます。ユウカちゃんの都合を見て、外で時間を潰してもらうか、リスケをお願いします」


 ……柄にもない丁寧語の文章。相当焦っていそうです。

 とりあえず僕は、「了解」のスタンプを返し、ユウカちゃんに事情を説明しました。


「……ってことで、時間空けてもらって申し訳ないんだけど、また後日にしようか」

「ううん、私だったら、今日予定ないし待つのは大丈夫だよ?むしろ、今日以降は部活もあるから、しばらく時間を合わせるの難しくなるかも……」

「そっか……でも、もう駅からバス乗っちゃったしなぁ……。駅前はともかく、住宅街だと、ファミレスとか喫茶店とか、ゲームセンターとか、そういう時間潰せる場所もないよね……」

「……うーん」

「…………」

「…………」




「……あっ、良かったら家の中で待ってる?」

「!」


 ……と、僕が何の気なく浮かべたアイディア。ですが、すぐに「流石にそれはいかがなものか」と思い直しました。

 いくら何でも、これをユウカちゃんに提案するのは……やっぱり、ここは撤回して……


「その、ご迷惑じゃなければ……」

「あっ、はい。お気遣いなく……じゃない、ご遠慮なく……」


 ……僕は、しどろもどろになりながら、彼女を自宅に招き入れることにしてしまいました。

 どうしようもない男です、僕は……。



* * *



 僕は、玄関の鍵を開けて自宅へと入って行きました。


「た、ただいま……」

「お、お邪魔します……」


 特に後ろめたい所も無いのですが、靴を脱いだ僕らは、そろそろとリビングに進んでいき、荷物を空いた椅子に置き、ダイニングテーブルにつきました。

 ……何でしょう、この緊張感は。僕は、ほの暗い家の電気をつけて、冷蔵庫から麦茶を、戸棚からコップをふたつ取り出し、お茶を注いだ片方を彼女に差し出しました。


「その、母さんが家に帰ってくるまでは、ゆっくりしてて……Wi-Fiのパスワードとか教えようか?」

「えっ、故障したんじゃ……」

「あっ、そっか……」


「じゃ、じゃあ、テレビとか……一応ゲーム機はあるしDVDやブルーレイも見れるはずだけど、最近あんまり遊んでないし、もしかしたら配線抜けてるかも……」


 僕は、テレビ台の前でしゃがみこんで、ゲーム機の確認しました。案の定、ランプは切れています。このあたりは父さんが管理してるはずなので、配線もどこにしまってるのか、ちょっとわからないぞ……。


「…………」


 ……なんだろう、普段の生活空間にユウカちゃんがいるという、現実味の湧かない状況に、普段の二人での会話以上にテンパってしまっているところを感じます。

 この気まずさのまま、夕方まで、二人で……?大丈夫なのか……?


「あ、あの……」

「はっ、はいっ!」


 僕は、慌ててひっくり返った声を出して、彼女を向き直りました。


「ちょっと気になったんだけど、その……」

「な、なんでしょう?」

「その、昔一緒に遊んだ、ハル君のお部屋って、今どうなってるのかな、って……」



 ………………



 ……流石にこれは、問題あるんじゃないかとは思いますが、どうやら僕の頭は既におかしくなっていたようです。

 気が付けば、僕はしどろもどろになりながら、彼女にルームツアーを始めていたのでした……。

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