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【連載版】実家住みおじさん、私道のど真ん中に湧いた邪魔なダンジョンと配信者どもをヘッドショットでぶっ潰す  作者: CarasOhmi
【番外編/序】実家住みおじさん、ダンジョンで保護したネコケモ娘の信頼をかけて母や妹とにらみ合う
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#4 異様なる食卓

「レイちゃん、そろそろ御飯よ~♥」

「は、はい……」

 おふくろの声を聞いて、元・ミツキの部屋からレイチェルさんが出てくる、台所に向かったようだが、それを遮るようにフタバが立ち塞がる。


「もう、レイちゃんは座ってなさいよ。まだ慣れない環境なんだから、しばらくはオカンやカズに甘えなさい」

「でも……」

「レイちゃんはね、うちの使用人じゃないの。お手伝いをするのは助かるけどね、まずは体調が万全になるように、ゆっくり療養しなさい」

「………………」


 ……レイチェルさんは申し訳なさげだ。

 異世界では、長らく商人の屋敷の掃除や荷運びなどの力仕事をしていたらしい。だが、彼女の体格は決してがっしりしているというわけでも無い。異世界は栄養学なども未発達であり、ましてや階層の低い庶民や使用人は、十分な栄養を取らずに肉体労働をしていると、ネットニュースにもあった。彼女もその御多分に洩れないと考えられる。

 まずは、しっかり栄養をつけて、適度な運動をして、よく眠る。……月並みだが、まずすべきことはそこからだ。


「座ってるのが居心地悪いなら、ハル君とチアキちゃんを起こして来てもらったら?」

「ハルトはともかくチアキはねぇ……賑やか過ぎて、レイちゃん困らせちゃうかも」

 ……チアキはフタバの娘。ハルトの妹で俺の姪っ子だ。今回の遺産整理としてのダンジョン探索の間、その面倒をおふくろに任せる感じで、ここしばらく週末帰省をして過ごしていた。最初の方こそ喜んでいたが、そろそろ田舎遊びにも飽きて来てた頃だろう。若者は、自然より東京の喧騒に憧れるもんだ。


「ハル君さえ起こせれば何とかするでしょ。レイチェルさんは、二人のケンカが収まったら、ご飯できてるって一声かけてくれれば、それで大丈夫だと思うよ」

「喧嘩……?」

「ああ、兄妹喧嘩さ。ハル君は大人びてるけど、チアキちゃんには偉そうにしててね、二人ともまだガキんちょなの。あまり怖がらず、遠くから眺めてればいいよ」

 レイチェルさんは、心配そうにおどおどしている。俺たちにとっては日常茶飯事だが、彼女の家族事情を鑑みると兄弟喧嘩も見たことないんだろうな。


「……心配なら、俺がついていこうか?」

「カズ、アンタは味噌汁作ってるだろ!?レイちゃんを言い訳にサボるんじゃないよ」

 おふくろは爪先で蹴りを入れてくる。結局、レイチェルさんはフタバとともに甥姪の寝てる部屋に、ミツキは眼帯マントの寝てる部屋に向かっていった。


 ……いや、アイツは家族枠じゃないし、飯振舞う必要はなくない?

「……これも人情、一宿一飯の恩でも売っておこうよ」

 まあ、仲間外れにしてまた闇堕ちされるのもアレだしな。ここは寛大に飯を振舞うとしよう。アフターケアは、ミツキとハルトにお任せだ。



 ――弟妹とレイチェルさんが去っていき、静まり返った台所には、俺とおふくろが残された。ここだけは普段の実家。田舎に取り残された、俺たち親子の日常と変わらない時間が流れている。

 ……いや、普段はおふくろに任せることも多いか。俺も見栄っ張りだな。


「カズ、レイちゃんのためにレンゲ用意しな。左の戸棚の引き出しにあるよ」

「ああ、そうか……箸持ち慣れて無いだろうしな。異世界に合わせるなら粥に……『にゃんこ飯』にしてあげてもいいか……『行儀悪い』とか言うなよ?」

「そんなこと言わないよ」

「……俺たちには言ってただろ」

 俺は、戸棚から食器を出し、湯だった出汁に味噌を溶かし始めた。


* * *


「ごちそうさまでした……」

「あっ、レイちゃん、口元に味噌汁ついてるよ」

「!!」

 フタバの指摘を受け、慌てて口元を隠すレイチェルさんに、おふくろがティッシュを抜き取り飛びついた。


「あら、レイちゃん拭き拭きしましょうね~っ♥」

「……いい加減にしろよババァ、レイチェルさんは大人の女だっつってんだろうが。みっともない真似すんな。世話焼きたいなら、チアキちゃんでもかまってやれよ」

 俺は、フタバの隣で飯を食っているチアキちゃんに視線を送る。チアキちゃんは顔を横にぶんぶんと振った。

「ばぁば、スリスリしつこいからイヤ~」

「………………」

「……ははっ!だってよ!しつこいババァは嫌われるぜ?それとも、レイチェルさんに構って、孫にやきもちでも焼かせたかったか?」

「こんガキャあ……孫やレイちゃんと違って、かわいくない息子だよ、アンタは」

「そりゃどうも、三十八のおっさんをスリスリしたがる悪趣味ババアじゃ無くて助かったぜ」

 おふくろは、レイチェルさんの口元を拭き終わり、ティッシュを丸めて俺に投げつけた。届くことなく畳に落ちたティッシュを拾い、俺はそれをごみ箱に捨てた。



「……あの」

「どうしたの?レイちゃん」

 レイチェルさんは、妖怪ババァの魔の手を抜け出して、フタバの下にいた。

「その……、カズヒロさんと、ユキエさんって、仲悪いんですか?それとも、私のせいで……」

「はは、いつもあんなよ。カズは兄弟の中じゃ一番生意気で、親に食って掛かるヤツなの。一々真面目に取り合ってたら、気疲れするわよ?」

「父さんが元気に生きてた頃は、もっと声デカかったなぁ。これでも大分落ち着いてるよ」

 親父の死の話を聞いて、レイチェルさんはハッと表情を変える。また、変に気に病ませてしまうかと心配になったが……家族構成は早めに知ってもらう必要があるか。


「親父が死んだのは、そこのチアキちゃんが生まれる前だよ。もうみんな凹んでる場合じゃないし、誰も気になんてしないさ」

「そうよ、あの唐変木が生きてたらコイツもウチにいないし、レイちゃんとも会えなかったんだから。死んでしっかり役目を果たしたんじゃない?」

「……うわっ、ひでー嫁さん。草葉の陰で泣いてるぜ?」

「三十年もアタシみたいな美人と連れ添えたんだから、十分元も取れてるわよ」

「へっ、妖怪に取りつかれたから早死にしたんだろ」

 俺とおふくろは、引き攣った笑顔で火花を散らしながらにらみ合う。

 無駄に自意識の高い枯れ木は始末に困るぜ。



「……ま、うちはこういう不謹慎な連中の集まりなの。レイちゃんも真に受けちゃだめよ?」

「カズ兄も母さんも、死人をネタにするのはどうかと思うけどねぇ、俺は。……レイチェルさんは、馴染もうとしてマネはしなくていいからね」

「はあ……」

 レイチェルさんは困った顔で俺たちのやり取りを眺める。気が付くと、いつの間にか近づいたチアキちゃんが、レイチェルさんの肉球をフニフニと揉んでいた。……おふくろには似てくれるなよ?



「あっ、この沢庵うまいっすね……」

「自家製だって。おばあちゃんに頼んで黒栖さんももらってったら?」

 ハル坊と話す眼帯マントは、沢庵をおかずに米をおかわりしていた。厚かましいなコイツ。





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