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【連載版】実家住みおじさん、私道のど真ん中に湧いた邪魔なダンジョンと配信者どもをヘッドショットでぶっ潰す  作者: CarasOhmi
【番外編2】実家住みおじさんの甥、幼馴染ギャルとダンジョンに潜り、こじれたケモノ性癖の矯正を目指す
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#25 守護者《ガーディアン》に挑め

 ダンジョンに銃声が響く――。


 私の構えた魔導狙撃銃マジカルスナイパーライフルから発射された魔力弾が、周辺を警戒して浮遊巡回する警備ゴーレムの赤い単眼を砕き、石畳の上に落下した。


「ナイスショット、ユウカちゃん」

「あ、ありがとうございます……」


 カナコさんが、親指を立てて私の射撃を褒めたたえた。 


「ちゃんと眼鏡をかけるようになってから、エイムも大分安定したし、狙った的に当たるようになってきたね」

「勢い良く動く的は、まだ難しいですけど……」


 警備ゴーレムはあたりを警戒して動き回るドローンのようなもの。こちらに気が付くまで固定径路を等速で動いているので、固定標的に当てられるようになってからは、狙って当てるのはそこまで難しくなくなった。


「うーん……でも、『素早く動く敵』って魔獣(モンスター)じゃない?……ユウカちゃん優しい子だから、いくら危険生物の狩猟だからって言っても、無理して撃とうとしない方がいいよ」

「…………」

「……もちろん、ユウカちゃんに危険が迫ってる時は、いくら仮想身体であっても、自分の身を守って欲しいと思うけどね」


 カナコさんは、フード越しに私の頭を撫でながらそう言った。


 ダンジョン探索において、先住民族はエスケープリングを使用しているため、万が一衝突が起こっても、双方命が失われることはないけれど、危険生物への攻撃に関してはそうではない。

 その体から採取される肉や毛皮、体内に蓄積された魔石は、コボルト集落にとっては資源でもあるため、決して無益な殺生ではないけれど、やっぱり躊躇があるというのは本心だ。


「カナコ、扇さん。先のロックを解除したから、これで八層のコボルト集落に行けるよ」

「それなら、村長に挨拶してポータルのマーカー設置して、今日は帰還しよっか」

「扇さんも、あんまり遅いと親御さんが心配するだろうし、それがいいね」


 ……私はこの一か月、放課後にカナコさん達とのダンジョン探索のお手伝いを、週三回ペースで行っていた。

 学校にも一応報告はしている。ハル君の探索については、彼が優等生であり、かつ「家業の手伝い」という名目もあったことで、先生も軽い注意で済ませていた。その手前、彼と同じ「(株)山神ダンジョンスイーパーズ」の手伝いをする私の活動についても、強くは言えないようだった。


 一応、カナコさんを通じて、ハル君のお母さん……「谷岡フタバさん」にも、この話は通している。

 昔馴染みだった私を預ける上で「ミツキさんとカナコさんが監督するなら、大丈夫だろう」ということらしい。家族間の信頼が見て取れる。


 ……ただ、私は「ハル君には秘密にして欲しい」とも、カナコさん越しに伝えて頂いた。ハル君に余計な心配をかけることも、私の「望み」が伝わることも、避けたかったからだ。




 ――けれど、そう都合よく事は運ばないのが世の常ということに、私は直面することになった。



* * *



「このダンジョンの最深部、願望機(ホープジェム)あるのかぁ……」

「…………」


 ミツキさんは、七層のコボルト村の村長の話を聞いて、ため息交じりにそう漏らした。

 私は、ミツキさんとカナコさんの会話を、後ろからただ黙って聞いていた。


願望機(ホープジェム)のあるダンジョンって、守護者(ガーディアン)っていう強力なゴーレムがいるのが常なんだよね……。例によって、耐用期間を越えてて制御効かなくなってるみたいだし……」


 ……いくら、超魔導文明の遺産と言っても、メンテナンスせずに永遠に正常に機能するシステムは、古代の天才コボルトたちにも作れなかったようだ。

 得てして、ダンジョンの最深部においては、これを作ったゴブリンやコボルトたちにすら手に負えなくなったシステムが、探索者に対して牙をむくらしい。


「ダンジョンを沈めるわけではなくても、警備システムをメンテナンスするために、一度は守護者(ガーディアン)を機能停止させなきゃいけないんだよね?」

「そうだね、僕ら三人だけだと流石に厳しいね……。最深部の攻略は、増援を頼んでパーティーを再編しようか」


 ミツキさんは、地下用スマホを取り出し、連絡先をスワイプして確認していった。

 協力者を検討しているようで、彼のあげた候補は以下の通り。




・土御門 竜(MOGURA):配信のスケジュールがあるため参加不可。

・清水 陽太(HIMIZU):参加可能。と言うより既に別働で探索協力中。

・黒澤 歴史(†黒栖†):配信のスケジュールがあるため参加不可。

・山神 レイチェル:妊娠中のため参加不可。

・山神 カズヒロ:レイチェルさんの付き添いとお子さんの世話のため参加不可。


・谷岡 ナツオ:たった今返答。最近は探索業にあまり参加していないため逡巡。

・谷岡 フタバ:合わせて返答。チアキちゃんを旦那さんに任せ参加を検討中。


・谷岡 ハルト:現在、お母さん(フタバさん)から連絡が入り返答待ち。




「…………」

「ユウカちゃん」


 カナコさんは、ウジウジと悩んでいる私の背中を、笑顔でさすって勇気づけた。

 ……結局、ダンジョンという世界に挑む以上、私は彼から逃げてるわけにはいかないんだ。



「……あっ、ハル君も行けるって、連絡入ったよ。黒栖くんが参加できないのは痛かったけど、今の彼が参加してくれるなら、大分頼もしいなぁ」


 ミツキさんの言葉を聞き、私は覚悟を決めた。



* * *



 ――僕は、正直驚いていました。


 JOLLYさんの一件があって、扇さんはダンジョンには苦手意識を持っていると思っていました。

 ですが、ミツキおじさんの話を聞くに、彼女は自分から「探索に協力する」と申し出たそうです。


 ……正直、僕としては心配な気持ちの方が強いです。

 僕の趣味領域に扇さんが関心を持ち、主体的に活動していること。それ自体は勿論うれしいのですが、この間のように浮かれた気持ちでそれを肯定するのは、いささか軽率でしょう。


 現実問題として、彼女は一度ダンジョンで危険な目にあいました。それが心に傷を残していないとは、僕には思えません。

 加えて、あの日の彼女を見て、僕は扇さんを「他者を傷つけられる人ではない」ことも、はっきり感じました。扇さんは、昔から変わらず、繊細でやさしい女の子なのです。


 ――ダンジョン攻略とは、本質的に暴力です。


 脱出ゲームのような謎解きや、秘境を旅するツーリング的な側面もありますが、その中では危険な生物であったり、暴走した警備システムであったり、……危険な探索者であったりから、手ひどい暴力を受ける可能性は否定できません。

 自分の身を守るために、時に自発的に他者を攻撃する能動性が求められる場面は、間違いなく存在します。


 だから、彼女がダンジョンに足を運ぶ上では、せめて安全の確保されたエリアを観光する程度にとどめて欲しい、というのが僕の率直な意見ではありました。


 ……そうした思いの一方で、彼女はカナコおばさんの師事を受け、狙撃訓練と探索補助を行っていたことを、母さん経由で伝えられました。


 我が家のヒエラルキーの頂点は母さんで、普段はあまり噛みついたことはないのですが、この時ばかりは「何考えてんだよ」ぐらいのことは言ったと思います。

 ……母さんに対して言うのは、少し筋違いだったと反省してますが、この時の僕は少し感情的でした。




「……ユウカちゃんが、自分から『やりたい』って選択したことを、何も聞かずに『やめろ』って言うの?……あの子の全てに責任を持たなきゃならないほど、あんたには確たる繋がりが、あるの?」


 ……母さんの言葉に、僕は口を噤みました。


 母さんは、僕の中学卒業までは、「深層への同年代だけでの探索」は、絶対にやめるようにと禁止していました。中学生の僕はそれを守り、最深部まで行くときは、探索慣れしたミツキおじさん夫婦や、MOGURAさんの付き添いに終始しました。


 ……思うに、最初の探索で「テロを考えていた頃の黒栖さん」を見たこと、守護者(ガーディアン)が、RPG-7を打ち込んでも落ちなかった事、父さんが目の前で粉砕機で粉々にされたこと。

 これらを踏まえ、最初のダンジョンで僕を同伴させて最深部まで進んだことを、危険な場所に連れて行ったと後悔していた所もあるんだと思います。


 しかし、僕が高校生になってなおダンジョン配信に興味を示していることを知り、「自分で考えて、信用できる人と行動しなさい」と、ルールを緩和しました。

 それは、義務教育課程を終えた僕に過干渉でいることは、良くないと考えてのことなのでしょう。


 ……確かに、母さんの言う通りです。扇さんはチアキと違って、僕の妹でも何でもありません。僕と同年代の、分別を持つ高校生です。

 であれば、少なくとも信用のおける大人の目の届く範囲であれば、僕の指図で探索を止めるほどの謂れはないというのも道理でしょう。


 扇さんの身を、心配する気持ちはあっても、押さえつけることは……確かにエゴなのかもしれません。


「……アンタは、もう私よりも手練れの探索者でしょ。経験者として、ミツキやカナコちゃんと一緒に、ユウカちゃんを危険から守ってあげなさい。それで……、心配をするなら、本人の口からしっかり事情を聞いてあげなさい」


「……わかった」


 母さんの言葉に、僕はうなずきました。


 ……思えば僕は、彼女に秘密を知られたことで、いたたまれなさから距離を開けてしまっていたのかもしれません。彼女がダンジョンに関心を持つのなら、そばで助けるべき役目は、友人である僕のすべきことであったにも関わらず。


 危険から遠ざけるにしても、同好の士として並び歩くにしても、僕は彼女との対話から逃げるべきではないでしょう。


 ――僕は、決心しました。

 ダンジョンで、しっかり、扇さんと話そう。


 彼女が危険な目にあったあの日のことも。

 僕たちの関りが希薄だったこれまでのことも。

 これから先のことも。


 僕は、母さんを経由し、ミツキおじさんに「僕も探索に協力する」と伝えてもらいました。







「あ、あと、ハルト……当日のことだけど……」



* * *




 当日。


 祠の前で名簿登録をする、ミツキおじさん、カナコさん、HIMIZUさん、扇さん。そして、近接~中距離のアタッカーがもう一人。

 当初は、母さんがその役割を務める予定だったのですが、少し、状況が変わりました。


 曰く、以下の通りです。




「週末には、レイちゃんの健康状態について、公的機関への報告の必要があるとかで、『アイツ』が東京に出てくるらしいのよ。せっかくだから手伝いに連れて行きなさい。時々しか探索に参加してない私より、半分専業みたいなアイツを連れてく方がアンタも安心でしょ?……新也(アラヤ)くんの世話と、妊娠中のレイちゃんのサポートは、私と父さんがするから心配ないわよ」




 かくして、母さんの代わりのメンバーとして「彼」が探索に加わることになりました。

 駐車場に停められた(株)山神ダンジョンスイーパーズのロゴと、白猫マスコットのステッカーが貼られたワゴン車。そこから降りてきたのは、身長一八〇センチ、最新の探索装備にショットガンを背負った男性。


 彼と直接会うのは、実に二年ぶりになります。




「よ、よう……ハル坊。……元気してたか?」


「う、うん……お久しぶりです……カズヒロおじさん」




 結婚してから丸くなったとは言え、相変わらず威圧感のあるおじさんは、気まずげに僕たちの方を見ていました。




 うーん……「対話しなきゃいけない人」、増えちゃったなぁ……。




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