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【連載版】実家住みおじさん、私道のど真ん中に湧いた邪魔なダンジョンと配信者どもをヘッドショットでぶっ潰す  作者: CarasOhmi
【番外編2】実家住みおじさんの甥、幼馴染ギャルとダンジョンに潜り、こじれたケモノ性癖の矯正を目指す
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#8 日見ずな陰キャ

(ひがし)川郷(かわさと)町の駐車場に……ですか?」


 僕の問いかけに、画面に映る男性は頷きました。


「うん、先月浮上したダンジョンだね」

「そこまでは知ってますけど……確か二階層の小規模ダンジョンって話でしたよね?」

「そうなんだけどさ、ほらここ」


 彼は画面を共有し、マッピングされたダンジョンの地図を僕に見せました。

 そして、ペイントソフトを使って、壁に囲まれた箇所に赤い丸を付けます。


「俺がこれまで潜ってきたダンジョンの構造上、ここの角みたいなデッドスペースは、隠し空間があると思うんだ。おそらく、移転魔法陣や階段があるんじゃないかって踏んでる。構造上、ここに空間があるときれいにシンメトリーになるし」

「はぁ、なるほど……」

「とりあえず、下調べも兼ねて来週末にでも軽く潜ってこようと思うよ。それで、想定通り隠し通路があったら、MOGURAさんと一緒にコラボ探索しようかなってね」

「ここのダンジョン、二階層の奥は動画も出てないですし、まったくの未踏径路だったら撮れ高もよさそうですね」

「……ま、実際に潜る時は『なんだ、この隠し通路はぁっ!?』みたいなリアクションするけどね。笑っちゃダメだよ」

「……それはそれで、おいしいんじゃないですか?」

「まあ、配信じゃ取り直しも出来ないし、そうなったらそれで通すけどさ……。たまにはネタじゃないガチ探索動画も上げたいよ……」


 彼はMOGURAさんの大学の後輩。

 僕たちが運動公園ダンジョンに挑んでいた日に、ちょうど探索者デビューを果たした、新進気鋭のダンジョン配信者である「HIMIZU(ヒミズ)」さんこと「清水 陽太(ひなた)」さんです。


 ……そう、おじさんが設置した地雷に連続で引っかかり、「自爆系ストリーマー」という不名誉な称号がついてしまった、気の毒な人です。

 とはいえ、そのうっかりミスが「おいしい」ヒキになり切り抜きが拡散。不本意ながらもネタ枠で人気を博した彼は、MOGURAさんとのコラボなどを通して認知も広がり、有名配信者になるチャンスをつかんだ形です。

 今では、いじられネタ要素も積極的に取り入れ、軽妙なトークと自爆芸を持ち味に、順調に登録者を増やしているそうです。


 最初に僕と会った時は、「あの地雷」を設置した張本人の甥ということで怪訝な顔をされたものですが、MOGURAさんのフォローや事情を話したことで打ち解け、今では撮影アシスタントに協力したり、時折相談する間柄になりました。

 なんなら、MOGURAさんよりは年も近いので、割と気安く話せる人でもあります。……あの人ほど素行も悪くないし。



「ところでハルト君、高校の方でダンジョン配信に興味ある友達作ろうって張り切ってたけど、どうなったの?」


 HIMIZUさんから質問が飛び、僕は少し気まずい気持ちになりながら答えました。


「……他のクラスで面識ない子だと、中々きっかけが掴めないってのもあるんですけど、もうひとつ足踏みする点があるんですよね」

「ん?」

「僕が、HIMIZUさんや、MOGURAさん、†黒栖(CROSS)†さんの知り合い……ってことです」

「あ、あぁ~……」


 彼は、僕の言わんとすることを察したように、声を漏らしました。

 中二系としてキャラの立ってる†黒栖(CROSS)†さん、自爆ネタに定評のあるHIMIZUさん、彼らは大手配信者のMOGURAさんに引き立てられる形で躍進した、人気ストリーマーです。


 必然として、ダンジョン配信を趣味とする同級生の会話においても彼らの名前はよく出てきます。


「昨日のMOGURAの配信見た?」

「HIMIZUまた地雷踏んだってよw」

「†黒栖(CROSS)†の魔導カラコン講座、もうちょい中二語彙減らした方が分かりやすいよな…」


 などといった具合に。


 僕は、主におじさんを経由して彼らと親交が生まれたわけですが、それを公にするのは厄介ごとを招きかねないと思っています。

 ストレートに言えば、彼らのファンに「会わせて!」とせがまれたり、あるいは情報が洩れて撮影に殺到してしまったり、プライバシーが暴かれたりなどの不安があります。

 彼らにも迷惑がかかるでしょうし、僕としてもそれをいちいち断ったり、仲介をしたりで、気苦労することになるだろうとは、容易に想像できます。


 ……僕自身の立ち位置も「有名人とのパイプ役」の扱いになるのは、友達作りの上でも本意でもありませんし、学校にバレることも心配です。

 その点で、この間の撮影事故で露見したのが、昔馴染みで口の堅い、それでいてダンジョン配信には関心の薄かった扇さんだけだったのは、不幸中の幸いと言えるでしょう。


 ……中学の頃は、ダンジョン配信に詳しくなることで同好の友達を増やせれば……と思っていたものですが、なまじ稀有な人脈を作ってしまったことが、友達作りのハードルを上げてしまった面は否めないかもしれません。

 MOGURAさんとの出会いが無ければ、クラスメイト伝いでダンジョン配信好きの子と一緒に「昨日のMOGURAの配信がさ~」と言った雑談もしていたことでしょう。


 彼らと知り合ってしまったことを後悔しているわけではありませんが、青春とトレードオフというのは、いささか悲しい所もあります。年が近いといっても、HIMIZUさんや黒栖さんとは七歳差ですからね……。


「……いっそ、君も配信者デビューしちゃったら?クラスでも人気者になれるかもよ?」

「いやぁ……アングラで学校からもいい顔されないでしょうし、僕もおじさんみたくキャラがブレブレの配信して、黒歴史生産しちゃいそうですしねぇ……」

「自覚があるなら大丈夫なんじゃない?それにさ、若いうちにイキるのはみんな通る道だよ」

「うーん……」


 ……クラスで人気者、かぁ。


 確かにちょっとだけ、そういう妄想をする時は、ないわけではないです。

 けど、おじさんの高校の頃の炎上話を聞くと、やっぱり気が引けるというか、MOGURAさんの知名度が加算されればよりシャレにならない結果を招きそうで、恐ろしいんですよね。七光さんをガッツリ燃やした張本人ですし……。

 そして、「配信で人気者になったから」で出来た友達が、そうした憂き目にあった時にも味方でいてくれるのか……そこも疑問です。


 やっぱり、根本的に友達作りは、「ダンジョン配信」という土俵を避ける形で進めるのが、一番無難なように思います。

 ……もどかしいなぁ。



「……というか、その扇さん?って女子と仲良くすればいいのに。君のこと心配して話しかけてくれたって言うなら、別に悪い感情持たれてるってことは無いでしょ」

「うーん……、そうは言っても彼女、陽キャコミュニティのギャルですよ?」


 僕の返答に、彼は眉をぴくりと動かしました。


「そりゃ、彼女は親切で、いい人ですけどね……正直、足を引っ張ってるみたいで、申し訳ないんですよ……」

「…………」

「僕としては、配慮もしてもらえて助かりましたし、話を聞いてもらえたことも嬉しかったですよ?……でも、だからって、同い年の友人に、あんまり迷惑はかけたくないじゃないですか。彼女も年頃ですし、僕みたいな男がくっついてたら、恋愛だってしにくいでしょ?」

「…………」

「イメチェンだって、そういう明るい青春に憧れたからじゃないかなぁ……。それなのに、僕みたいな陰キャとつるんで悪目立ちさせたら、そんな夢も台無しじゃないですか。人には分相応な場所って物があるんだって、僕は思いますね」

「…………」

「今は親切心で声をかけてくれたにせよ、後々になって幼馴染の恋路を邪魔するお邪魔虫として煙たがられるなんて、御免ですよ」




「はぁ~~~~っ……」

「な、なんですか……?」


 HIMIZUさんは肺の空気を絞り出すほどの、深いため息をつきました。

 ……そんな呆れられるほど、なにか、変なこと言ったかな?


「何でもないよ。君がそう思うなら、そうすりゃいいよ」

「……含みのある言い方ですね」

「まあ、きっと、その内わかるよ、その内、ね」

「…………」


 彼は僕に視線を送り、頭をかきながら、続けました。


「……まあ、一応言っておくと、さ」

「言うんですね」




「……『陰』だの『陽』だので括れるほど、人の気持ちって単純な物じゃないと、俺は思うよ。親切心ってのは素直に受け取るべきだし、変に後ろめたく思うことが、かえって相手の厚意を無下にして、傷つけることだってある」

「…………」

「『汝の欲するところを人に施せ』ってところだね。相手の『好意』とは、ちゃんと向き合いなよ」


 ………………


 ……確かに、そうかもなぁ。


 一度距離を置いてしまったこともあって適切な距離が掴めなくなってるというか、テンパって変に突き放しちゃってるのかもしれません。

 陰キャには高いハードルではありますが……彼女の「厚意」にちゃんと向き合って、自然体で接していけるようになりたいものです。

 


「……う~ん、わかってなさそう」




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