#51 エンドレス・バレットマーチ
「あっ!同業者の方を発見~っ!パーティー攻略してるみたいですね!せっかくなのでコラボ撮影でも持ち掛けてみましょうかw」
照明の絵巻の明かりに照らされながら、スマホを持った若者が一人元気にしゃべっている。配信者だな。
「すいませ~ん!あなたも冒険者ですか~?」
「いいや、地権者……の、代理だよ」
俺は魔導猟銃のフォアエンドを引き、若造の上半身を吹き飛ばした。瞬間、指輪が眩く輝き、若造の身体が光の粒子になり、地上に送還される――
「わっ……カズヒロさん……初手で発砲って、容赦ない……」
俺の後ろで、ローブとスタッフを持ったレイちゃんがあんぐりとしている。
フタバやミツキの時と違って、乱暴な姿を彼女に見せるのは、なんとも居心地の悪さを感じるな……。
「……敷地に入ってきている以上は、注意しても聞かないかもだし、反抗されるのも危険だしね」
「まあ……依頼主の方が、祠の前で救護スペース用意して待機してるから、武装解除もできて一番平和的……なのかな?」
「トラブルにならないように、アイテムは返却する想定で回収してくよ」
「うん、魔導金庫に入れてくね」
……俺たちがいるのは、長野県に出現したとあるダンジョン。
ここは私有地であり、迷惑探索者に困っている地権者の依頼を受け、(株)山神ダンジョンスイーパーとして探索を行っている。
今日は、本格的な探索というよりも下見のようなもので、入り口付近のクリアリングをしていたのだが、さっそく配信者と遭遇したというわけだ。MOGURAの野郎と出会ったのもこんな流れだったが……あんな厄介な知り合いは二人も三人も要らんな……。
「じゃあレイちゃん、魔導監視映像機と脚立を、チェストから出してくれる?」
「……はいっ」
「サンキュー」
俺は、脚立を上り、ダンジョン通路の天井に、監視カメラを取りつけた。魔力伝播により、地上に映像を送信できる優れものだ。
もちろん、監視カメラは地上にも設置しているが、既に深部まで潜った配信者の証拠を残すためにも、ダンジョン内にカメラを設置しておけば、トラブル時の証拠も残る。
「よし、じゃあこの辺はこんなもんで……」
壁に手をつきながら脚立を降りていたその時、俺が手をついた一段せり上がったブロックが、音を立てて奥に押し込まれた。
同時に……俺たちの後方に魔法陣が輝き、トゲ付きの鉄球が現れる――
「――鉄球召喚トラップ!?」
「カズヒロさん……っ!」
「おうっ!」
俺たちは、一目散にその場を駆けだした――
* * *
……行き止まりだ。
いや、違うな。断崖絶壁というべきか……下の階層に直通の、吹き抜けの切り立った空間がそこにあった。階下と言っても、高低差は二十メートル程度はある。ロープ無しで落ちたら……地上送還だな。
そもそも、今日は一階層以上の深入りは想定していなかったので、ここから下に行くつもりも、そのための十分な装備もない。
そして後ろからは迫る鉄球。もう考える時間もないが……どうしたものか。
「――カズヒロさんっ!」
後ろから駆け寄ったレイちゃんの声。振り向くと同時に、俺の足元は地面感覚を失い、尻が浮く感覚とともに急な加速感に襲われた。
これは――――
――――レイちゃんは、俺をお姫様抱っこして、断崖から跳躍し、十メートルほどの断崖を飛び越え、向かいの通路に着地すると同時に、半身をひねるように後方を振り向いた。
トゲ付き鉄球は、重力に逆らうこともなく、俺たちの目の前で、階下に落ちて行った。
「……ありがとな、レイちゃん」
「どういたしまして。けど、今ので加速魔法のスクロール使っちゃった……」
「緊急時だし大丈夫だよ。……むしろ、あの土壇場でよく判断してくれたよ」
「えへへ……」
褒められてレイちゃんは頬を染めながら、嬉しそうに照れている。かわいいな。
「ただその、お姫様抱っこは、少し恥ずかしいから……そろそろ下ろしてくれる?」
「あっ……ごめんね……カズヒロさん」
彼女は申し訳なさそうに、俺をその場に下ろした。
情けないけど、跳躍力や瞬発力、柔軟性みたいな身体能力は、レイちゃんの方が圧倒的に高いんだよな……。俺のことも簡単に持ち上げちゃうし……。
「……その、恥かかせちゃった、のかな?」
「いや……つまらん男のプライドだからさ。『くだらねー』って、鼻で笑ってくれればそれでいいよ」
「………………」
俺は、とりあえず現在地を確認すべく、アンダーネット端末のタブレットでマップを開いた。この辺、まだ未探索だな……。モンスターや配信者の遭遇は警戒した方が良いかも。
「……カズヒロさん」
「ん?どうした、レイちゃん」
「その、もし気にしてたら……私の事、お姫様抱っこ、する?」
「えっ……」
……ちょっと悩んだ。
というかこれ、レイちゃんがお姫様抱っこして欲しいっていう、甘えアピールだ。
まあ、こういう所は、恋人同士の関係ってことで、ちょっと甘酸っぱい感じが、楽しくはあるんだけど……。
「……いや、今は辞めておこう。仕事が終わってからな」
「あっ、ごめん……不真面目だったね……」
「うーん……、というよりも、まあ、その、ね」
「?」
「あんまりダンジョンでイチャついてると、モテない男に僻みでヘッドショットされるかもしれないから……」
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実家住みおじさん、
大好きなネコケモ婚約者と、
明日へ向かって進む
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俺たちは、避暑地を後にして、六月の蒸し暑くなってきた外へ出た。
映像受信端末を依頼主に渡して、現状を報告したら、レイちゃんと予約している宿に向かうとしよう。
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