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【連載版】実家住みおじさん、私道のど真ん中に湧いた邪魔なダンジョンと配信者どもをヘッドショットでぶっ潰す  作者: CarasOhmi
【番外編/終】実家住みおじさん、大好きなネコケモ婚約者と、明日へ向かって進む
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#49 未来を拓くモノ

 通話アプリのウィンドウにモグラ野郎の顔が表示された。


『どーも』

「おっす、お疲れさん。配信明けか?」

『今日は雑談枠ですね。魔導兵装の装備カスタムについてですねー』


 あれから、コイツに紹介してもらった配信者や行政書士に、外国人の滞在手続きについて色々聞かせてもらった。その報告と礼として、今通話をかけたわけだ。


 ……深く考えなかったが、運動公園の時にレイちゃんとアルバイト契約を結んだのは、結構際どかった。まず、彼女は就労ビザを持っておらず、これが不法就労に該当する可能性が高かったためだ。

 家族経営とは言え、山神ダンジョンスイーパーは企業だ。彼女に「無償でダンジョン攻略を任せる」ことが労務上問題かと、黒栖の坊主やモグラ野郎と同じ扱いにしようと判断したこと。これが、逆に仇になったわけだ。


 ただ、異世界の転移事故に関しては「不本意に入国してしまう」「帰国先と国交が樹立されていない」など、これまでの入管法で取り扱うことが難しく、入国管理局もそのあたりへの酌量の余地を鑑みて、在留特別許可を判断するようだ。そのため、法律専門家の人脈も持っていたMOGURAに、重ね重ねの恩が出来た、というわけだ。


「……ありがとよ、MOGURA」

『うわー、僕に礼を言うの、らしくないっすね~、カズさん』

「……素直に受け取れねぇのかよ」


 俺だって、お前みたいな厄介野郎に進んで礼は言いたかねぇよ。


『うーん、ま、そこはギブ&テイクにしましょう。ひとつ貸しってことで、今度何か手伝ってもらえます?』

「……『LEAちゃん』の出演はさせねぇぞ?」

『いやー、なんだかんだ、「KAZUさん」でも話題性はあるんで、そっちでもいいですよ』

「……はぁ~。もう、配信は懲り懲りなんだがな。こんなオッサン見て何が楽しいんだか」

『またまたぁ……ついこの間、ホビダンのWEB版のインタビュー受けてた、時の人じゃないですか』


 ……ホビーダンジョンの取材の件か。

 あの記事……予想外にバズっちまったなぁ……。


『……というか、意外でしたよ。さっきの話じゃないけど、カズさんの事だから、レイチェルさんの出演なんて絶対断ると思ったのに』

「うーん……実際、俺もそのつもりだったんだが。休憩取ったタイミングで、レイちゃんに頼まれてな。今後のことも相談して、出てもらおうってことになったんだわ」

『それはまた……どうしてです?』


 俺は、手元のコーヒーを一口飲んで、視線をモニターに戻した。


「……レイちゃんは大人の女だ。いつまでも、箱入りで家に閉じ込めるわけにはいかないし、社会参加を目指すなら一人で外に出ることも考えなきゃだろ?……けど、現実問題として、今の日本において、キャシィ族ってのはどうしても目立っちまうし、世間からは好奇の目で見られるのは避けられねぇ」

『まあ、そうですねぇ……』

「だったら、彼女自身が積極的にメディアに出て『キャシィ族』の存在を伝えていけば、世間的にも『有名人』の扱いになる。多少の居心地の悪さはあっても、無名な相手だからと、調子に乗って変なことをしようとする輩に釘が刺せる」

『あー、なるほど。「目立つ無名な人」よりは「有名人」である方が、ちょっかいもかけられにくいし、味方になってくれる人もいるでしょうしね』


「……とはいえ、やっぱりリスクもあるし、素直に賛成はできなかったんだが……レイちゃん自身が『キャシィ族への理解を求める』活動にモチベーションが高かった面もある」

『ほう』

「現代日本でキャシィの子なんてほとんどいない。ポータルが限定的なだけでなく、社会全体が『ホモサピエンスに最適化されてる』からな。これから人的交流が増えていく中で、キャシィ族に向けた業態が増えてきたら、定住や長期滞在もしやすくなるだろう。それで、レイちゃんも同族と触れ合う機会が増えて、疎外感が紛れるんじゃないかって、な」

『相互理解の懸け橋になろうってわけですね』

「大業な言い方にはなるが……まあそういう事だな」


 ここまでの話を聞いた銭ゲバモグラ野郎は、下心の透けて見える笑みを浮かべた。


『だったら、LEAさんにゲストに来てもらって、ウチのチャンネルで対談するのも……』

「ダメだな。コンプラ的に信用できん」

『そんなっ……最近では大分、内容も健全化が進んでるんですよっ!』


 まあ、不法侵入とかはしなくなってるようだが、そんなのは大前提だ。

 ……それに、レイちゃんを客寄せパンダになんてさせるかよ。


「過去ってのは、簡単には消えねぇの。視聴者層だって、炎上好みの連中大量に抱えてるだろうが……」

『そこは……人気チャンネルの宿命ですかねぇ……』

「はいはい」


* * *


『しかし……』

「ん?」


 モグラ野郎は神妙な顔で話し始めた。


『こうして考えてみると、全ては願望機(ホープジェム)の……上位存在(スター・システム)の掌の上、だったのかもしれないですねぇ……』

「……っつーと?」

『あなたが、レイチェルさんを現世に呼び出したことですよ。あなたが自己批判した通り、本来なら同意のない異世界転移って、誘拐みたいなものじゃないですか』

「ああ……、実際それはまだ気になってはいるんだよ。……レイちゃんとおふくろの手前、もう表立って話す気はないがな」




 ……結局、この一件についてはおふくろには話さないことにした。レイちゃんや兄弟とも話し合って決めたことだ。

 家族がみな知っていることを隠すことに後ろめたさもあったが、一方でおふくろも既に高齢だ。すべてが落着し、息子が婚約まで決めたここで、その根本的な出来事が人の道にもとる出来事に端を発していると伝えることは躊躇われた。

 もちろん、俺としてはそれも含めておふくろに知ってもらいたい気持ちもあった。思うに、それは俺が罪を吐露し「楽になりたい」気持ちの残り香だったのかもしれない。

 だが、兄弟もレイちゃんもそこには反対した。自分たちがそれを知っていれば十分で、徒に母の心に重荷を負わせる真実を語る必要はない、ということだった。

 確かに、おふくろは俺が結婚しないことに負い目を持っていたのは、俺にも察せられた。その結果、娘のように大事に思うレイちゃんを「さらってきた」と知ったおふくろがどう思うか、想像に難くない。

 俺は、兄弟は、レイちゃんは、そしてこのことを知る関係者は、一連の出来事をおふくろには伝えず墓まで持っていくと決めた。「正しく」はないが……幸せのためにはそうしなくてはならないと、そう考えたのだ。




『……で、ですよ』


 モグラ野郎の声で、俺は現実に戻る。……そうだ、願望機(ホープジェム)の話だったな。


上位存在(スター・システム)は人道に反する願いを叶えないための倫理機構じゃないですか。そうなると、実家ダンジョンでの願いを叶えたことって、どうしても矛盾してしまうでしょう?』

「ああ、そうだよな……アレがあったから、七光のボンボンの願いが叶いかねない危惧があったわけでさ」


 モグラ野郎は、息を吸って、続けた。


『……恐らくですが、願望機はダンジョン内でのカズさんの振る舞いを認識していたんだと思います。ほら、四十六号の方も地雷の件について、話すまでもなく認識していたでしょう?おそらく、願望機はダンジョンというシステムに組み込まれ、その内部で起こっていたことをすべて把握しているんです』

「あー……」

『だから、四十九号……実家ダンジョンの方は、あなたがダンジョン先住のゴブリンに手を出さず、同盟を組んで厄介冒険者を送還していった姿を、見ているんですよ。ダンジョンの整備や祭祀を司るゴブリンたちを守ったことが、あなたの好印象に繋がったんだと思います』


 ……成り行きではあるんだけどな。ゴブリンガルをインストールしてたハル坊がMVPか。


『そして、あなたの願い……「猫耳のお嫁さん」。これでキャシィ族を送るのも、大分飛躍した解釈じゃありませんか?無限に存在する異世界なら、あなたの望んだ猫耳のヒューマン系種族だって、召還できたはずじゃないですか』


 ……確かに。

 今でこそ、俺はレイちゃん以外の恋人なんて考えられないが、あの時の俺の「願い事」を叶えるなら、明らかに要望とズレた成就をさせているように思う。


『……もしかすると上位存在(スター・システム)は、あなたが……あなたの家族が、容姿容貌にとらわれることなく、レイチェルさんと誠実に関係を深めていくことを……、そしてレイチェルさんが、異世界の人種の理解を求めて活動をすることを、彼女の人柄からある程度想像してたんじゃないですかね』

「………………」

『そう考えると、レイチェルさんの召還は「あなたの個人的望みを満たす」かつ「現世の人間社会をより善いものに変えていく」という、ふたつの意義を叶え得るものになる。……それは倫理にはもとるでしょうが、大局的には人類のためになる。そしてあなたも、過ちに無頓着なまま快を貪るタイプじゃない。その信用から、彼女の身柄を預けるに足ると判断した』

「………………」

『これが僕の考察ですが、いかがでしょうか?』


 ………………


「……うーん。結局それも、俺にとって都合のいい解釈じゃね?」


 俺の回答に、MOGURAは気の抜けた笑いを漏らした。


『ま、そういう考え方もできる、ってことですよ。案外、上位存在(スター・システム)も無謬ではなく思惑があったかもしれない、ってことです。願いの実行者である以上、それを実行した上位存在(スター・システム)にだって、少なからず責任はあるでしょう?そう思えた方が、多少カズさんの良心の呵責も薄れるんじゃないですか?』

「……薄れさせるつもりはねぇよ」

『はは、相変わらず手厳しい人ですねぇ』


 奴は、縦長い缶のエナジードリンクを一口飲んで、右手元に置いて、言葉を続けた。


『……自分自身にも、ね。手厳しい人ですよ。あなたは』





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