#45 報告!恋愛!相続!
「大事な話?」
「ああ、すごく大事な話だ――」
「結婚でもするの?」
「おいッッッ!!!」
このババァ……ッ!いきなり核心突いて来るんじゃねぇよ!
わかってても、もう少し待てよッ!俺たちが!勇気を出して!報告する所だっただろうがッ!
「情緒ってもんがあるだろ!わかってても言うんじゃ……」
「えっ……あっ……本当に?やだ、ちょっとカマかけて、からかうだけのつもりだったのに……」
「…………っ!」
最悪のタイミングで、最悪の冗談をかみ合わせやがった……。ふざけんなよ、本当……。
「……いや、その、ね?アンタ、レイちゃんと出かけるとき、薬指に指輪はめてたじゃない?けど、あれ婚約とかじゃなくて、多分ダンジョンで使う物でしょ?これは、女に恥かかせて喧嘩して帰るんだろうなーって、私はそう思ってたのよ。だから、女心のわからんアンタをからかって、レイちゃんを意識させて、関係を進展させてやろうかなーって……。ちょっとした気遣いだったけど、まさか本当に婚約して帰ってくるなんて……」
「やめろっ!逐一説明されると余計恥ずかしくなるっ!」
「……ああ。うーん……、もう一回……最初からやり直す?」
「ワケねぇだろ!どうしてくれんだよ、この空気!」
「いや、ごめんって……レイちゃんはともかく、アンタが自分から、レイちゃんに好きだなんて言いだすと思わなかったのよ……」
………………
「待て。まさか、カズ、あんた……レイちゃんから、告白させたんじゃないだろうね?」
「うっ」
「……それで、よくもまあ、そんな偉そうに言えたもんねぇ。男の甲斐性を見せた結果なら堂々とすればいいけど、最後の最後まで女に恥をかかせたのかい?」
「それは……」
「ははっ、やっぱりアンタは父親そっくりだよ!いつまでもモジモジとして、プロポーズをする度胸もろくに出せんかったあの男とっ!いくら嫌がろうと……血は争えないねぇっ!」
「……やめろっ!両親の恋愛話とか……息子が一番聞きたくねぇ話だろうがっ!」
「父さん……母さんにリードされてたんだ……」
「あー、オトンって亭主関白気取ってたけど、二人になると結構もじもじしてたし、あれ演技よ?」
「……そうだったの!?」
「……ここだけの話、オトンってオカンと二人きりになると『ユキエさん』って呼んでたり、ね……」
「うわっ……ちょっと意外というか、頑固おやじみたいな感じあったからイメージ壊れるなぁ……」
「その辺は、カズも演技に乗ってあげてたしねぇ……小さいミツキの前でもいいカッコしたかったのよ」
「……それ、墓まで持って行ってあげるのが人情じゃない?」
「ごめんな、レイちゃん……、無神経ババァが、せっかくの報告の雰囲気、台無しにしちゃって……」
「……責任転嫁するんじゃないよ、甲斐性無しの中年が」
「少し黙ってろやババァ。遺産相続の第二ラウンド始めんぞ」
「ふん、一銭もやるもんかい。土地も資産もレイちゃんにくれてやるわ」
「……おい!マジで火種になること言うんじゃねぇよ!兄弟夫婦全員集まってんだぞ!」
おふくろは、ヤベェって顔で弟妹夫婦の顔を見た。ナツオさんとカナコさんは気まずげに視線を逸らす。
……俺の失言癖はこのババァの血か。
「あっ……、えっと……、カズヒロの相続分の話ね?」
「ちょっと、オカン……真面目なトーンで言うのやめてよ……冗談ってことくらいわかるから……」
「俺たちも、反応しづらいよそれ……。まあ、文書は早めに遺しといてね?」
……骨肉の争いへの憂いか、ミツキの一言は余計な生々しさをいっそう煽ってる感じだ。……これからは、弟妹夫婦がいる時に遺産ネタを引っ張るのは、控えよう。クソほど気まずい。
……くすっ
気まずい空気の中に、笑い声が聞こえた。
振り向くと、レイちゃんは、口をかわいらしい手で押さえて、無邪気に微笑んでいた。
「……カズヒロさんも、ユキエお母さんも、おかしいんだから」
俺とおふくろは、顔をそろえてレイちゃんを見つめる。
「……私、この世界に、来れてよかった。カズヒロさんと、ユキエお母さんと、みんなと……家族になれて、すごく、幸せ」
レイちゃんの笑顔を見て、おふくろは不謹慎なプロレスを辞め、神妙な面持ちでレイちゃんの前に正座した。
「レイチェルさん」
おふくろから本名で呼ばれ、レイちゃんはびくりと背筋を伸ばした。
「貴女も知っての通り、カズヒロは、短慮で、乱暴で、見栄っ張りで、唐変木な、どうしようもない人間だけど……」
最悪じゃねぇか。
「それでも……貴女を幸せにしたいって、その事には真面目に向き合う男よ」
「……はい」
………………
「だからね、『あなたが幸せになること』が、このバカ息子を『幸せにする』ってことなの。そのことだけは、しっかり覚えておいてね」
「…………はい」
「それがわかってれば十分。これからもカズヒロをよろしくね、レイちゃん」
「……はいっ!」
……なんだよ、真面目にやればできるんじゃねぇか。
最初から、この雰囲気出せてたら、ちゃんと締まったのにな。
「じゃっ、これからも仲良し親子として、お義母さんとスキンシップしましょうねぇ~♥」
「きゃっ……♥」
……駄目だこりゃ。
これからも、威厳のある姑なんて、とても期待できねぇよ。
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